105 / 216

第五章・11

「なあ、ギル。俺は、いい弟だろうか。お前の愛する家族に、なれるだろうか」 「それはまだ答えられないな。何せ私は、お前のことはまるで知らないんだから」  俺はギルを充分知ってるし、理解しているんだがなぁ、などとぼやきながら、運ばれてきたコンソメスープを口にするジーグは、愛嬌があった。  このまま、ただ普通の家族として彼を受け入れることができれば、どんなにいいか。  ギルは生ハムと玉ねぎのマリネをつつきながら、そう思う。  しかし私の立場は、次期法皇候補、だ。  法皇となる器の持ち主かは、四六時中観察されているだろう。  判断力があるか、行動力があるか、先を見通す目があるか、などなど。 (こうしてジーグとのんびり食事している私を、法皇様はご存じだろうか)  そして、もし把握しておいでなら、こんな私の行動をどう捉えておいでだろうか。  家族を愛するという情を、高く評価してくださるのだろうか。  それとも、降って湧いたような自称・弟という怪しい男を即座に始末しないことに、眉をひそめておいでだろうか。  今後、場合によっては殺す。  そんな可能性をまだ胸に秘めたまま、ギルはジーグと昼食を摂った。  表面上はにこやかに笑いながら、双子の弟と楽しい時間を過ごした。

ともだちにシェアしよう!