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第五章・11
「なあ、ギル。俺は、いい弟だろうか。お前の愛する家族に、なれるだろうか」
「それはまだ答えられないな。何せ私は、お前のことはまるで知らないんだから」
俺はギルを充分知ってるし、理解しているんだがなぁ、などとぼやきながら、運ばれてきたコンソメスープを口にするジーグは、愛嬌があった。
このまま、ただ普通の家族として彼を受け入れることができれば、どんなにいいか。
ギルは生ハムと玉ねぎのマリネをつつきながら、そう思う。
しかし私の立場は、次期法皇候補、だ。
法皇となる器の持ち主かは、四六時中観察されているだろう。
判断力があるか、行動力があるか、先を見通す目があるか、などなど。
(こうしてジーグとのんびり食事している私を、法皇様はご存じだろうか)
そして、もし把握しておいでなら、こんな私の行動をどう捉えておいでだろうか。
家族を愛するという情を、高く評価してくださるのだろうか。
それとも、降って湧いたような自称・弟という怪しい男を即座に始末しないことに、眉をひそめておいでだろうか。
今後、場合によっては殺す。
そんな可能性をまだ胸に秘めたまま、ギルはジーグと昼食を摂った。
表面上はにこやかに笑いながら、双子の弟と楽しい時間を過ごした。
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