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第五章・15

 おかしい。  こんなはずでは。  ベッドの上で、ルキアノスとキスを交わしながら、ジーグはひどく焦っていた。 「ん……、ギル……」  甘く囁きながら、咥内の深くまで舌を伸ばすルキアノス。  その上顎を舐められると、ギルは感じて興奮するんじゃなかったか? だったら俺も、そうなるはずなのに。 「待……、ルキアノ……待ッ……」  確かにこうして口づけを交わすだけで、すでに体の中心に充血が始まっている。  しかし、心地よいとは思わない。  気持ちが悦いとは感じない。 「どうした? 何だか今日のギルは、違うな」  抗い始めたジーグに、ルキアノスは容赦なく愛撫を続ける。  いつもと違う、ギル。  嫌がるような素振りを見せる彼を苛める、加虐の興奮を感じているのだ。  失敗した、とジーグが悔やむ頃には、ルキアノスは彼の内に遠慮なしに挿入って来ていた。  激しく喘ぎ、体を反らせて感じている割には、声を上げないギル。  そんな彼の顔を窺うと、眼を堅く閉じ唇をきつく噛み締め必死で耐えているのだ。  どうして、とルキアノスは大きくゆっくり腰を使いながら、彼の耳元で囁いた。 「なぜ、我慢する。ん? 昨夜みたいに、もっと素直になって」 「んッ、く。あぁッ……」  昨夜みたいに。  昨夜のギルとルキアノスの情事の様子も、ジーグの記憶に書き込まれている。  まだ、ギルの代替品であった時の、ギル´ だった頃のジーグへ、送られている。  激しく、深く。まるで相手を殺すかの勢いで乱れて愛し合った、ルキアノスとギル。  その残像が脳裏を走る。  そんな昨夜のギルと自分がシンクロした瞬間、ジーグはついに声を上げていた。 「ッ、うぁ、あ! あぁッ、は、あぁあッ!」 「いいよ。いいよ、ギル。そのまま動いて。俺にも、君を感じさせて」

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