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第五章・16

 ルキアノスに言われるがまま、ジーグは腰を動かし始めた。  ぎこちなく、動かし始めた。  やり方は、解かっている。  ギルはこうして受け身でいながら、自らの性器をルキアノスに突き立て、擦り付けるのだ。  彼の鍛え上げられた腹筋を、愛撫するのだ。 「はぁ、はぁ、あぁ。あ、んぁ、あッ、あッ、あぁッ」  ジーグの喘ぎに悦がり声が加わり、耳を通してルキアノスを興奮させた。  体内を出挿りさせるものの硬さと大きさが、さらに増した。 (この……、この感じ……ッ! クッ、忌々しい……ッ!)  喘がされ、揺さ振られながらも、ジーグはどこか冷めた意識を持っていた。  ルキアノスのペニスを、しっかり受け止め呑み込んでいるこの体。 あつらえたようにぴったりハメられている、この感覚。  ギルの体はルキアノスによって、カスタマイズされているのだ。  誰でもない、このタンの神騎士に一番具合のいいように、造られてきたのだ。 (こいつッ。ルキアノス、ギルを。よくも、ギルの体をこんな風に……ッ!」  ルキアノスへの憎悪を膨らませながらも、その体は抗えない。  早く。早くイキたい。もっと。もっと感じたい。  ルキアノスの吐く荒い息が、臭う。  首筋に舐め付けられる唾液が、臭う。 『ルキアノス臭いからな』  朝、ギルにそう言い放った自分の言葉を思い出した。  あの時、すでにルキアノスが憎かったんじゃないか、俺は!  俺のギルをいいように弄ぶ、この男を許せなかったんじゃないか、俺は!  だのに。  だのに……ッ! 「ぐ、うぅッ! うう、んッ。うぁ、あ、あッ、あッ、あぁああ!」  ジーグはルキアノスの腹に、白い体液を飛ばした。  その温かさを受け止め、ルキアノス自身もまたジーグの内にたっぷりと種付けた。 「あ、あぁ、あ。ギル……ッ」  どく、どくりと体内へ注がれるルキアノスの精。  吐き出されるごとに彼の体からは力が抜け、やがてジーグを上から抱きしめるようにくず折れた。  はぁはぁと、息を整えながらルキアノスはキスをする。  ギルと信じて疑わない、彼の双子の弟に愛を囁く。  馬鹿だ。  この男は、馬鹿だ。  そしてこの俺もまた、同じくらいに大馬鹿者なのだ、とジーグは思っていた。

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