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第六章・4

「あッ、チ! あぁ、かハッ。はッ、はぁガッ!」  目の前で、熱いお好み焼きを口の中でふぅふぅ言わせているジーグを見て、ギルは声をたてて笑っていた。 「そんなに慌てて食べるからだ。そら、水だ。頑張って飲み込め」  笑うギルを恨めしそうに見ながらも、ジーグは四苦八苦していた。  飲むことも吐き出すこともできない、熱い熱いお好み焼きに、悶絶していた。  もとはと言えば、ジーグが情報を得てギルを誘った店だった。  今度新しく、珍しい料理を出す店ができたそうだから行ってみよう、と。 「何でも、たっぷりの生地に好きな食材を混ぜて、焼きながら食べるらしいんだ」  そんなジーグに伴われて、ギルは外出した。  新しいものや、珍しいもの。  そういった事に、特別な興味をあまり持つことのないギルだった。  長蛇の列に並んでまで、経験したいとは思わない。  ブームが去った頃に、のんびりと冷やかしに行く。それも、覚えていたら、の話だ。  できれば波風の立たない、穏やかな毎日を過ごしたい。  静かな日常を望むギルとは違い、ジーグは刺激的な出来事を好んだ。  死産で生まれた、ギルの双子の弟・ジーグ。  両親には別の嬰児の遺体を引き渡し、ジーグ本人は蘇生され聖域の立ち入り禁止区内へ運ばれた。  後に神騎士となる運命を持つギルの代替品として、影武者として育った男。  ギルの経験した事は、精神的なものも肉体的なものも全て脳内に埋め込まれたナノ・チップにより、ジーグへ移植され続けた。全くの、瓜二つの二人となるはずだった。  しかし、運命の女神のいたずらか、ジーグは地下室から逃げ出し自我を得てからどんどん個性を強めていった。  兄のギルとは全く違う、ジーグという一人の人間としての特色を深めていった。 「クッソ、死ぬかと思った。ギル、こんどはお前の番だ。アツアツを一口、俺の前で食べて見せろ」 「馬鹿な。たった今、目の前で、お好み焼きで死にかけた男を見たんだぞ。少し冷ましてから食べるよ」 「何てずる賢い男だ!」 「どうとでも言え」

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