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第六章・17

 ベッドのヘッドボードに体を預け、ルキアノスはギルの髪を指先で弄んでいた。  結構いい値段の部屋なので、外からの音はもちろん、隣室との防音も完璧だ。  空調の音もしないし、エア・フレッシュナーのスプレー音もしない。  そんな静かな中、ギルがルキアノスをしゃぶる音だけが静かに響いていた。  突然に射精しないよう、手でしっかり根元を押さえ唇を滑らせるギル。  ゴムを使ってのプレイは、あっという間に終わってしまった。  散々乱れるギルを苛めているうちに、ルキアノスもまたひどく昂ぶっていたのだ。  すでに勃ちあがったものがギルの手によって達することに、そう時間はかからなかった。  その後の、生で愛して欲しい、とのルキアノスの願いを、ギルは受け入れた。  射精直前に被せればいい、だの、出そうになったらバスルームへ走って行くから、だのと必死で訴えてくるルキアノスに、ギルは笑った。 「それはいい。慌ててバスへ逃げ込む君の姿を、ぜひ見てみたい」  そんな風に、笑って。  すっかりギルに体を許したルキアノスは、ひどく積極的な彼に驚いていた。  何の抵抗もなしに、手で、唇で、舌でルキアノスを愛するギル。  ちゅぱ、ちゅぱ、と控えめだった水音が、次第にじゅぱ、じゅぱと充分に濡れた音に変わっていく。  浅く先端を舐め回すかと思えば、喉に届くくらい深く咥え込んで上下させる。 「ん、ぁ。ギル……ッ。あ、もう……ッ」  誰に仕込まれたのか、とは微塵も思わなかった。  ただ、いつもの俺を真似て、ようやく口でしてくれるようになったんだ、と信じて疑わなかった。  施しながら、ジーグの姿は考えていないギルだった。  初めて口淫をしたのは、双子の弟に対してだ。  だが、今愛しているのはルキアノスなのだ。  彼と臥所を共にしている以上、他の誰かを考える事はできなかった。

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