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第六章・21
生命誕生の神秘。
そう考えて、すぐにそれは間違いと思い直した面々だった。
聖地内で、最も聖なる場所・ファタル神殿。
その中でも最高機密の機関に携わるスタッフ達は、眼の前の人工生命創生カプセル内で現人神 が次第にその姿を整えてゆく様を見守っていた。
驚異のスピードで構成されてゆく、初期胚。
瞬く間に卵割が進み、桑実胚を形成。
その後、胚子、胎芽を経て胎児へ。
人間じゃない。
誰もが、そう考えた。
常に冷静に数字やデータ、経験や仮説を元に動く技術スタッフは、最も大切な、記録を取る、という基本も忘れてしまっていた。
電力は使えないので、電子頭脳への入力はできない。
だが、このカプセル内から発せられる光を頼りに、何とか紙とペンとで書きとめる事はできたはず。
電波時計やクォーツ時計は全て止まってしまい、発生からの変化が何分何秒で進んで行ったかが解からない。
だが、レトロ趣味を持つ人間の多い神官たちの中には、ゼンマイ式の腕時計を手首に巻いていた者もいた。。
技術者と神官が、それぞれの持つ知識や技能。
そして電力に頼らない道具に気づいていれば、この奇跡を記録し、神の御業の片鱗くらいは知る手がかりを得る事ができただろう。
神だ。
誰もが、そう考えた。
そう結論付けた以上、人々はその様を見守る事しかできなくなっていた
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