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第七章・2
午後は、何をするでもなく室内で過ごしていた。
本を読みかけては、止め。
昼寝しかけては、止め。
動画を少しだけ眺めては、止め。
そんなところに、ギルからのメールが届いた。
件 名:どうしてる?
メッセージ:外で食べるので、今夜の夕食はいらないよ。
帰宅が遅くなるかもしれないから、先に休んでくれていい。
買ってもらったタブレットを、ぱふん、とソファに投げ置いた。
ついでに自分の体も投げ出した。
「誰と一緒に、食うんだ?」
わざと、からかうような口調で独り言をこぼした。
それでも、心を重く暗く覆ってくる負の感情は、誤魔化すことができなかった。
「ルキアノス、だよな」
今度は、不機嫌そうな声で独り言を吐いた。
しばらく天井とにらめっこしていたが、やがて起き上がりギルへの返事を書いた。
件 名:Re:どうしてる?
メッセージ:ちょうど今、ハンバーグの挽肉をこねてた。
晩飯はいらないって? 残念だな。
なるべく早く帰ってくれ、と書き加えようとしたが、やめた。
あまりにも、露骨すぎる。
『俺が飯を作って待ってるんだぞ? ルキアノスなんか放っておいて、さっさと帰れよ』
こんな行間が、読めてしまう。
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