149 / 216
第七章・10
ジーグがジーグとして、一個人としてしっかり歩み始めた証なんだと、兄らしく弟を励ました。
しかしそれでも、ジーグは取り乱すだけだ。
「ギルが。ギルが消えてしまう、俺の中から。行かないでくれ、ギル。ずっと、ずっと俺の中にギルは」
「解かった。大丈夫だ。私はここに居る。いつだって、お前の中にいるから」
強く、抱き締めた。
そして今度は、自分から唇を合わせた。ジーグの咥内に舌を入れ、優しく舐め触れた。
ていねいに、ゆっくり。宥めるように深いキスをした。
「今度は。ジーグ、お前が私の中に入って来てくれないか」
今にも泣き出しそうだったジーグは、ギルと顔を合せ、その眼を見た。
そして、兄がやったように口づけた。舌を伸ばし、ギルの咥内へ押し入ってきた。
「ッん。んぅ、んん……っ」
ギルもまた、ジーグを求めた。互いの舌を絡ませ、舐め合い、吸い合った。
夢中でキスに耽っていたギルは、ジーグの腕が背中からじわじわと下へ延びていく事に気付かなかった。
突然、腰から一気にボトムをずらされた時には、本当に驚いた。
「ぅあ!」
ギルの表情が、声があんまり可笑しくって、ジーグは声をたてて笑った。
「驚いたか? 何て声を出すんだ」
そして、そんな風にまるで子どもっぽい仕草をするくせに、次の瞬間には色に眩んだ大人のまなざしを寄越してくるのだ。
ともだちにシェアしよう!