151 / 216
第七章・12
昨夜の流星や火球、謎の停電の事などを話しながら、聖獣・ティーの神騎士バンと、同じくスウの神騎士シドクは静まり返った回廊を歩いていた。
誰の気配もない、夜の明けきらぬ早朝。
長く伸びる回廊に、甲冑の立てる金属音と会話だけが響く。
普段は要所に配置されている衛兵の姿すら、無い。
「人払いまでされておるとは」
「やはり、重要機密が伝えられるのでしょうか」
バンとシドク、二人が法皇神殿の前まで到着した時には、すでにマーオの神騎士ニネットと、ホイのバーラが立っていた。
「教皇からの招集に、ニネットが一番乗りとは珍しい」
毎度毎度、一番最後に。しかも遅刻までして呑気に現れるはずのニネットが。
そんな彼がやけに早く、しかも神経質そうな表情で仲間の到着を待ちわびるとは。
「お前らも、なンか感じるだろぉ? 昨日までと違う何かが、聖地に起きてるって」
わずかに苛立った声色で、だがバーラの肩に手を乗せる時には穏やかに、ニネットは二人に話した。
バンとシドク、二人の神騎士に、年少のバーラがていねいに朝の挨拶をしているところに、朗らかな声が届いた。
「よかったな、ステリオス。お仲間がいたぞ」
甲冑の大きな翼をコンパクトに畳んだ状態で、聖獣ホイのルキアノスが現れた。
傍にはまだ12歳の、彼の弟・ステリオスを連れている。
ステリオスもまたバーラと同じく、年少の神騎士だ。
心技体まだ円熟してはいない年齢だが、神騎士の甲冑に主と認められたため、それを身に纏うことができる。
神騎士にだけ語られる、重大発表。
まだ幼いとはいえ、法皇はこの場に彼らを呼びつけた。
若すぎる彼らに、理解できるのだろうか、との疑問がバンやシドクに湧いた。
次々とやってくる神騎士の同士たちは、法皇の真意が解からぬまま集合し、ついには神殿の中へと招き入れられた。
ともだちにシェアしよう!