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第七章・13
よく来た、といつものように重みのある口調で、その場に集った者共へ声をかけた法皇だったが、いつもと違い玉座から降りていた。
聖地カラドでも、最高を誇る地位のひとつである神騎士。
そのさらに上に立つ、聖地での絶対的な存在である、法皇。
彼が、自分らと同じ目の高さまで降りていることに動揺が広がった。
しかしそんな彼らを気にする様子もなく、ただ淡々とこの聖人は語り始めた。
「昨夜の異変は、ここに居る全ての者が感じたことと思う。特にニネットは、一言あるのではないかな」
「ヤバいんじゃねぇの? 闇界が、とんでもないくらい聖地に近づいたぜ」
近づいた、と言うより、近道ができた、という感じ。
そんな補足を加えるマーオの男に教皇は静かに頷き、片手を挙げると水平に流した。
途端に、玉座はもとより聖地の全体を見渡すことのできる俯瞰鏡、望遠システム、多次元展開装置に電脳類など、室内全てのものが忽然と消えた。
「ぅわあ」
「消えた!」
子どもらしく感嘆の声を上げた、ステリオスとバーラ。
まるで手品みたいだ、と嬉しそうだが、周囲を取り巻く大人たちは、ただ法皇の力の強大さに声を失った。
まざまざと見せつけられた、オーラを自在に操る能力の高さに、平伏した。
神騎士は、物質を原子レベルまで砕くほどにオーラを高めることができる。
だが法皇は、原子の配列を変えてしまうほどにオーラを展開することができる。
室内にあった様々なものは、元のままそこにありながら、目に見えないだけなのだ。
原子同士が結びつくと、分子となる。その分子が結びつき、さまざまな物質が構成されている。
法皇は、その複雑な分子構造を一瞬にして規則正しく配列させてしまった。
規則正しい結晶構造となった分子は光を通すので、透明に見えるのだ。
がらん、と何もかもが無くなってしまった法皇の間。
主がさらに手を挙げ、上から下へ振り下ろす。
今度は、四方を固めるものが全て透明になってしまった。
美しい円天井も、滑らかなタイル壁も、磨き上げられたロイヤルストーンの床も、全てが透明に。
その場の人間は皆、宙空へ浮いているような心地に陥った。
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