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第七章・17

 微弱な振動を、感じた。  聖人の偉大なる力で、分子配列を変え透明になってしまった法皇神殿。  それがどんどん上昇して行くのだ。  法皇神殿が、12聖獣の神殿から切り離されて上へ、さらに上へと高く高く昇ってゆく。  そして、下を見ていた全員が、声を失った。  霊峰が、沈んでゆく!   神話の時代より受け継がれてきた、聖なる地が沈む。  そして、そこを守護する12神殿が、それぞれやはり宙空に浮き上昇して行くのだ。  ティー神殿から始まり、次の神殿へと進む毎に高度が上がる事は変わらない。  だがその高さが、尋常でないほど上がり続けているのだ。 (ジーグ! ジーグ、起きてるか!?)  ギルは思わずジーグへとテレパシーを送っていた。  自らの思念だけでなく、見たもの、聞いたもの、感じたものを全て中継でジーグへと送り続けた。  極めて危険な行動だった。  周囲にいるのは、そういったサイキック能力を感知しやすい神騎士たち。しかも、法皇まですぐ近くに立っているのだ。  彼らに、自分が第三者に向けてこの情報を発信していることが知れたら、ただでは済むまい。  それでも、ギルはどうしてもジーグにこの情景を伝えたかった。自分と同じ体験を、共有させたかった。  帰宅して、脳内を彼に覗かせればそれで済むはず。  だが、今この時を、他ならぬ双子の弟・ジーグと共に味わいたかったのだ。  やがて13神殿の上昇は止まり、完全に神殿群は宙に浮いた形となった。  それぞれを連絡するのは、目を凝らさねば見えないほどの、透明な階段。  地上から法皇神殿まで延々と続くそれは、特別に訓練され鍛えられた人間。そう、騎士でなければ駆け上がる事のできない高さと長さを持っていた。

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