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第八章 披歴
「右、良し! 左、良し! 異常、無し!」
ただそれだけで、ニネットはマーオ神殿を飛び出した。
朝日が昇るとともに、上空高く浮遊するかのように座標を変えた13神殿。
神騎士らはその現象を最上階の法皇神殿で、主たる聖人と共に目撃した。
みな驚きを禁じ得なかったが、それは女神ファタルが御降臨された証であると聞くと、喜びと共に身が引き締まった。
闇界との最終戦争が、間近である。
神騎士たちは、自らの守る神殿へ何か変わりはないかと確認に赴いた。
建屋の造りに綻びはないか。
気圧や温度、湿度を保つ機器類は正常に稼働しているか、
メインセンターを始め、地上の連絡施設とのネットワークは働いているか。
一日がかりでも終わりそうもない、大変な作業だ。
神騎士たちは、この降って湧いた業務内容に右往左往させられたが、ニネットだけは3秒で終わらせた。
「ニネット様、どちらへ!?」
「これまでの間取りを元に、新しい建築図面を起こさねばならないのですが!」
「気圧が未だ不安定なのですが!」
「メインセンターとの無線LANに、中継機を設定したいのですが!」
「そもそも、私らはどうやって地上へ戻ればよいのでしょうか!?」
「後はよろしく~」
「ニネット様ーッ!」
マーオ神殿スタッフの悲鳴を背中に、ニネットはすでに甲冑を脱いでいた。
「それどころじゃあ、ないってぇの♪」
自分ひとりだけが浮かれて、地上へと降りて行った。
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