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第八章・2

 一日中、食事もとらず休憩もとらず、ザン神殿の環境設定を確認していたギル。  ようやく今後の目処がつき、ひとまずはエレベーターに自神殿のスタッフを乗せ、オプションの座標転移装置を起動させて地上へ送った。  隣のよしみで、マーオ神殿付きの人間たちも送り届けた。  明日は、気圧を安定させるシステムのプログラムを書き換えなくはならない。 「落ち着くまでに、1週間はかかりそうだな」  自分もようやく神殿を後にし、帰途に就く頃にニネットとばったり出会った。なぜかバーラを伴っている。 「ギル様、こんばんは」 「やあ、バーラ。ニネットと一緒かい?」  はい、と美しい少年は微笑み、隣に立つニネットを見上げながら話した。 「ニネット様が、飛行船に乗せてくださって。間近であの大きな月や、星雲を眺めて参りました。それはもう、素晴らしくて」  貸切で、お食事まで御馳走になってしまって。祝福のキスもいただきました、と屈託なく喋るバーラ。  目を丸くするギルに、ニネットは苦笑いして自分の額を指でつついている。 (おデコにキス、か)  さすがに、まだ10歳のバーラを食べてしまうほど悪党ではないらしい。 「良かったよ~、空中デート! 飛行船運航会社の株も、買っちゃった♪」 「呑気なものだ。マーオ神殿の人間が、困っていたぞ」  それは今から神殿に行って、ちゃんとメンテナンスの計画表を作るつもり、とニネットは笑う。 「ギルも、早めに乗っといた方がいい。たぶん近いうちに、1年先くらいまで予約が埋まるよん」  一緒に楽しむお相手は、誰かなぁ? と首をかしげてギルを覗き込むようなニネットの仕草に、どきりとした。

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