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第八章・4

 ルキアノスから色よい返事を受け、ギルは自宅へ帰った。  そこには、双子の弟・ジーグが待っている。 (はず、だ)  関係者以外立ち入り禁止の深い深い地下室で、ギルに万が一の事があった場合の代替品として、培養ポッドの中で眠り続けていたジーグ。  逃げ出してすぐは、本当にまるで私の顔つき、私の性格、私の言葉遣いで。  本当に、私が二人いるようで。  しかし、ジーグ、と名前を与え、日々共に暮らすうちに、愛し合ううちに、まるで別人と変わっていった。  今でも顔は同じだが、その表情がまるで違う。醸す雰囲気が全く違う。  ギルは、ギル。  ジーグは、ジーグ。  それぞれ、違う道を歩み始めたのだ。  そして、そんなジーグはギルより外へ出ることが好きだった。  最近は外出したまま帰らずに、兄をやきもきさせる事もしばしばだ。  しかし、今夜は居てもらわないと困る。大切な予定を話さねばならないのだから。  そしてギルが室内へ入ると、幸いなことにジーグは在宅していた。

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