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第八章・16
(その裏で、ルキアノスに負けてはいられない、と思うようになったのはいつからだろう)
もう夜も遅い。
話を聞いてくれる神官など誰もおらず、無人の部屋へ入った。
中は広々としており、掃除手入れの行き届いた清潔な香りがした。
そして奥には、ファタル像が静かに立っている。
「女神ファタルに全てを告白しろ、という訳か」
今はまだ幼い赤ん坊の姿であられるという、ファタル。
いずれ彼女は成長し、私の懺悔に耳を傾けてくれるのだろうか。
黙ってギルは磨き上げられたフロアに膝をつき、軽く瞼を閉じた。
壁や高い天井に飾られた金銀のオーナメントが空調の風に揺れ、囁きかけてくる。
まさにギルが心の中でまだ見ぬファタルへ語りかけようとしたその刹那、女神像から人影が浮かび上がった。
「……法皇様!」
仮面と法衣を身に付けた、正装の法皇の姿がそこにあった。
そして、何も不思議ではないように、当然のように尋ねるのだ。
「ジーグは元気か」
「はい」
ああ、やはり。
この御方は、何もかも全てご存じなのだ。
ギルは、腹をくくった。
何もかも打ち明けてしまおう、と心に決めた。
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