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第九章 内示
もう、始まっているのだよ。罪も罰も。お前たちが自ら罪を被り、自らを罰する。
ルキアノス、ジーグ、そして自分へ向けられた法皇の予言者めいたこの言葉を、ギルはひと時も忘れることは無かった。
と、言いたいところだが、実は往々にして忘れることが多かった。
空中高く浮遊した、12神殿と法皇の間。
ギルのみならず、ルキアノスや各神殿の主はそのメンテナンス作業に大忙しだった。
実際のプログラミングや施工は、全て技術者がやってくれるので困ることは無いが、それでも管理責任者が現場に居ないわけにはいかない。
そういった事で忙しく働いていれば、あの不気味な予言は頭の中から消えてくれる。
しかし帰宅し、深夜になると頭どころか胸をかきむしられる思いを味わう。
そして、そんなギルから余計な不安を消し去ってくれるのがジーグだった。
「ふ……ッう。んっ、んっ、んうぅ……」
ランプシェードから漏れる柔らかな灯りの元に、ギルの秘かな声も漏れる。
寝着をすっかりはだけ、引き締まった腹筋の下までジーグの腕は伸びていた。
すっかり硬くなった自身をギルの内股に擦りつけながら、ジーグはローションで潤った兄のものを弄る。
腹で呼吸を始めたギルは、その足をも引き攣らせ泡立つ快楽に必死で耐える。
「何を我慢しているんだか」
揶揄するではなく呟くように言うと、ジーグはギルに被さった。
獣のように頬ずりし、兄の甘い体臭が濃さを増した感覚を味わう。
コロンに興味が無いではないジーグだったが、ギルと同じ体臭を消す気にはなれなかった。
双子の兄弟、この身に纏う匂いまで同じと思うと、得も言われぬ優越感が心を満たした。
このギルを、まるで自分だけの所有物であるかのようにふるまうルキアノス。
憎いあの男に一歩抜きんでて、ギルに最も近い人間である事に秘かな満足感を覚えていた。
菓子のような甘ったるさではない。香の余韻のような、甘い匂い。
ギルの肉茎を弄っていたその手を、先の丸みまで伸ばしてくるくると遊ばせると、兄の呼吸はさらに乱れた。
「……ッ、ジー、グッ。駄目だ……」
「ダメ? 吐いて楽になってもいいんだぞ」
「嫌、だッ」
じゃあ、と気怠い響きのジーグの声だ。
ああ、もっと切羽詰ってくれないか? 私と同じように。私はこんなに狂おしいのに。
「どっちがいい? たまには上に乗ってみるか?」
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