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第九章・15
何重ものセキュリティを通って、ルキアノスとギルが聖人の元へとたどり着いた頃には、時刻も夜に近くなっていた。
法皇の間の壁は透明のガラス状。
夕闇が拡がる中に、煌々と巨大な月が輝いている。
(先だって、おくるみを持って窺った時はアンティークな神話のレリーフが一面に広がっていたはずだが?)
そうルキアノスが考えた時には法皇の手が翻り、壁面を瞬く間に無機質な機動システムへ変化させた。
まるで手品でも遊ぶかのように、物質を自在に操る法皇の御業。
到底俺なんかに務まらないとルキアノスに思わせる程に、鮮やかで崇高だった。
そして残酷なまでに、話しは速かった。
「ギル、そしてルキアノス。二名の内から次代の法皇を選出する」
挨拶も無く、世間話も無く。
いつもの慈愛に満ちた法皇の御姿はそこには無く、ただ単刀直入に本題に入ったのだ。
法皇の手には、古びた本が一冊。
革の表紙を持つそれは、聖地のみならず女神ファタルの運命すら記されているという噂の『ファタルの予言書』だ。
法皇の証として、代々継がれてきたものだ。
その予言書を持って、法皇は二人の間近へ歩み寄った。
そして予言書は、跪き、こうべを垂れたルキアノスの肩へと、そっと触れてきた。
「予言書を、聖獣・タンの神騎士ルキアノスへ託す」
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