197 / 216

第十章・4

 ギルの口から零れるのは、聞き取りにくく意味の無いうわ言ばかりだった。  そして唯一意味のある言葉といえば、愛する弟の名だけだった。 「ジーグ、……ッジー、グ。ジーグ!」  俺はここだ、との返事の代わりに、ジーグは強く腰を穿った。  温かだったギルの内が、ジーグに散々擦られて熱く火照っている。  その熱に、ジーグは眩んだ。  生まれてくる時二つに分かれた命が、魂が、今ここで元の一つに還っている。  俺はギルで、ギルは俺だ。  途端にジーグは、濁流の予感を覚えた。 「ギル、出すぞ。そのままでいいんだな?」 「構わ……ん」  ギルもまた性器から手を放し、解放の時を迎える準備をしている。  ベッドの上で激しく動く男が二人。やがて二人同時に、オーガズムに達した。 「うッ! あぁ、あ。ああぁあッ!」  ギルの声を聞きながら、腹の上に吐き出されるギルの精を温かく感じながら、ジーグは兄の内へ種を放っていた。 「はぁ、はぁ、はッ……」  終わった後も、ゆるりと二人で腰をゆすった。やがてギルがジーグから離れ、その隣りへうつぶせになった。 「スキン、付けなくてよかったのか?」 「シャワーを浴びて始末するから、構わない」  生で中出ししたのは久しぶりだ、とジーグはわざと下卑た口調でギルの反応を待った。 「たまには、いいさ」  返ってきたのは、そんな言葉。弟の挑発に乗るような兄ではなかった。  さっぱりしてくる、とギルは全裸のまま裸足でバスルームへ消えた。 「たまには、いいさ、か」  今度はいつ、許してくれるのやら。  苦笑いして、ジーグは眼を閉じた。ギルが風呂から上がって起こしてくれるまで、仮眠を取るつもりだった

ともだちにシェアしよう!