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第十章・4
ギルの口から零れるのは、聞き取りにくく意味の無いうわ言ばかりだった。
そして唯一意味のある言葉といえば、愛する弟の名だけだった。
「ジーグ、……ッジー、グ。ジーグ!」
俺はここだ、との返事の代わりに、ジーグは強く腰を穿った。
温かだったギルの内が、ジーグに散々擦られて熱く火照っている。
その熱に、ジーグは眩んだ。
生まれてくる時二つに分かれた命が、魂が、今ここで元の一つに還っている。
俺はギルで、ギルは俺だ。
途端にジーグは、濁流の予感を覚えた。
「ギル、出すぞ。そのままでいいんだな?」
「構わ……ん」
ギルもまた性器から手を放し、解放の時を迎える準備をしている。
ベッドの上で激しく動く男が二人。やがて二人同時に、オーガズムに達した。
「うッ! あぁ、あ。ああぁあッ!」
ギルの声を聞きながら、腹の上に吐き出されるギルの精を温かく感じながら、ジーグは兄の内へ種を放っていた。
「はぁ、はぁ、はッ……」
終わった後も、ゆるりと二人で腰をゆすった。やがてギルがジーグから離れ、その隣りへうつぶせになった。
「スキン、付けなくてよかったのか?」
「シャワーを浴びて始末するから、構わない」
生で中出ししたのは久しぶりだ、とジーグはわざと下卑た口調でギルの反応を待った。
「たまには、いいさ」
返ってきたのは、そんな言葉。弟の挑発に乗るような兄ではなかった。
さっぱりしてくる、とギルは全裸のまま裸足でバスルームへ消えた。
「たまには、いいさ、か」
今度はいつ、許してくれるのやら。
苦笑いして、ジーグは眼を閉じた。ギルが風呂から上がって起こしてくれるまで、仮眠を取るつもりだった
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