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第十章・7
「私との甘いひとときが祝いの品だ。受け取ってくれるか?」
「よろこんで」
ルキアノスは今回の件で、ギルとの関係が断ち切られることをひどく恐れていたので、彼の申し出を喜んだ。
自分から訪問してくれたギルを、愛しく思った。
(真意のほどは解からないがね)
これは自分への、宣戦布告かもしれないのだ。
現に隠さずギルはこう言っている。
私はまだ、諦めてはいない。
ぶるん、とルキアノスは、ひとつ首を振った。
考えるな。
今後は、シンプルに過ごすんだ。
俺は、次期法皇なんだ。
我に返ると、すでに寝室に着いていた。
ギルが唇の端を舐めながら、ルキアノスの服を脱がせにかかっていた。
ルキアノスのものを、布の上から撫でたり引っ掻いたりしていたギルだったが、やがて上目づかいで彼の表情を確かめた後、ボトムのジッパーをゆっくり下ろした。そして、直にそれを掴みだすと、味わい始めた。
性器の裏でギルの舌の熱さを感じながら、ルキアノスは施す彼を見下ろしていた。
「んっ、ふッ、ふッ……」
秘かな漏らし声も隠そうとせずに、じゅぽじゅぽとしゃぶるギル。やがて肉茎を手づかみ、先端を舌先で弾くように苛めてきた。
「ギル。それ、ヤバい……ッ」
「イッてもいいぞ」
今度は舌腹で、裏を大きく舐め上げる。ちら、ともう一度ギルの視線を感じたルキアノスは、既視感を覚えた。
まるで、あの頃のギルみたいだ。
体を交えるようになって、間もない頃のギル。
シャワールームで愛し合った時の記憶が、甦る。
彼が何かを企んでいるような、そして俺はその手に絡め取られてしまうような、そんな危うさ。
こんな気持ちで主導権を握られるのは嫌だ、といった幼稚な征服欲が首をもたげてくるのが自分でも解かる。
「ギル、腹這いになって」
バックからか、とギルは苦笑いした。
(新法皇様は気位が高くていらっしゃる)
いいさ、と思った。
こうして言いなりになってやるのは、後々の為。ルキアノスが私に法皇の座を譲るように仕向けるための、布石なんだから。
そのためなら、いくらでも隷従してやる。言いなりになって、いい気にさせて、最終的には私の願いを通さずにはいられないようにしてやるさ。
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