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第十章・8
それは本心か
は、とギルは動きを止めた。
指を挿れてギルの後ろを拓いているルキアノスの動きに併せて、腰を振るのを止めた。
「どうした? ギル」
何でもない、と言いかけて、ギルはルキアノスの喜びそうな事を言った。
「悦いところに当たって……。巧いな、やっぱり」
素直なルキアノス。
ほら、もうそれだけで全身で嬉しさを表現する。
「愛してるよ、ギル。本当に……」
後ろから覆いかぶさってきたルキアノスは、ギルの肩に頬ずりをし、甘噛みし、背中のいたるところにキスを落しながら挿入ってきた。
「んっ、う……」
ルキアノスの律動に、ギルの思考は痺れてゆく。力強い抽送に追い詰められ、法皇の座すらどうでもよい事に思えてくる。
「あぁ、ッあ。はぁ、はぁ、ぅああ!」
「ギル、愛してる。愛してるから……」
「ルキアノス。私も、だ。愛し、て、ッ」
そう。私は、この男ルキアノスを愛しているのだ。
忌々しいことに、愛してしまった。
苦しめてやろうと、粉をかけたのは私の方から。それがいつしか本気で彼を……愛して……。
ぱん、とルキアノスが激しく腰を叩きつけた。
前立腺のさらに奥、精嚢まで届くかと思われるほどに深く深く穿ち始めたルキアノス。
獣のような荒い息の合間に、ギルの名を呼んでくる。
「はぁ、はっ、はッ、はぁ、ギルッ!」
「う、ぐぅッ! あ、あぁ、あッ、あッ!」
極まって、ギルは先に果てた。
そのわずかな隙に、気力の糸が切れたその時に、不意を打ってルキアノスの濁流がギルの内を満たしていた。
「あ! あぁああ!」
彼の精液が、ゴム越しに内を打ち付けてくる。熱が、ギルの性感帯にまで達してくるようだ。
思わずギルは、腰を揺らしていた。もっと、もっと感じたい。貪欲に、ルキアノスの愛を受け取りたい。
どさり、とルキアノスがギルの隣に体を投げ出した。
まだ繋がったまま、背中越しにギルに呟いてきた。
「ギル。今夜はずっと、傍にいてくれる?」
「……解かった」
少しかすれた声で、ギルはそう言った。
これまで、一度もルキアノスの元で共に朝を迎えた事の無いギル。それは彼に心底溺れてしまわないようにという自分自身への戒めと、もう一つジーグのためでもあった。
それを、今崩す。
(法皇になるためだ)
頭はまだのぼせていたが、その思いは再び甦っていた。
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