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第十章・11
ジーグは夢中で予言書をめくった。双子の兄弟に関する項を探し、むさぼり読んだ。
ただそこには淡々と、これまで自分らが歩んで来た道のりが記してあるのみだった。
いや、歩んで来たのではない。歩まされたのだ、予言書どおりに。
「ジーグ。お前の覚醒も解かっていた」
「……知った上で泳がせていた、と?」
返事が無い。
無言でリーエンは、ジーグの手から予言書をそっと取り上げた。
「全ては女神ファタルの為、だと」
ジーグの声は、怒りに震えていた。
「こんな紙切れを綴った、どこの誰が書いたか知れぬものの通りに、俺たちは踊らされていただと!」
俺の自由もギルへの愛も、ルキアノスへの憎しみさえも、この予言書に書かれている通りに演じさせられてきたのか。
ジーグは絶望に陥るより、怒りに走る道を選んだ。
「何が女神だ、何がファタルだ。あんな赤ん坊のために、人の運命を捻じ曲げてもいいのか!? あの赤ん坊さえいなければ、ギルは法皇になれたはずなのに!」
ギルは幸せになれたはずなのに!
逆上したジーグの怒りの矛先は、リーエンへと向けられた。
先程、体から外した装飾品の中に『使えそうなもの』があることを、ジーグは見落としてはいなかった。
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