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第十章・14
華やかなファタル降臨の儀式は、盛況のうちに終わった。
荘厳な音楽や朗々とした祝詞、美しい舞に胸躍る叙事詩。
そして常に、その中央には女神ファタルが立っていた。
遠目でも見えるよう、巨大ディスプレーに映し出されたその御姿は、まだ幼さの残る十代の少女。
人々はその美しい顔に、姿に、夢中になった。
表情に乏しい、と感じた者もいたが、それすら神秘的なのだと考えを改める。なにせあの御方は女神なのだから。
ファタルをお守りする騎士として、その最高位である神騎士たちは皆甲冑を身に付けた正装で儀式に加わった。
「初めて見た時にゃあ、赤ん坊だったのに。いつの間にあんな美少女に育っちゃったワケ?」
「ニネット、私語は慎め」
「なにせ神様だからな。1ヶ月も経たない間に御成長あそばされてもおかしくはない」
そんな感想を言い合う同僚の中、ギルとルキアノスは一つの疑惑を抱いていた。
以前キュクロプスの創った有機メタル製のアンドロイドを、二人は見ているのだ。
(まさか、あの時の人形?)
(危険が無いように、本物のファタルは儀式には御出席なさらなかったのか?)
ファタルには、常に法皇が寄り添っている。
護るように、ではなく、まるで監視するかのように。
そしてセレモニーが終了し、神騎士の面々も後の勤務に戻ろうかとしたところで、ルキアノスだけがキュクロプスに呼び止められたのだ。
「すみません、ちょっと相談したいことが」
早口で、小声で。そんな秘密めいた所作に、ルキアノスもまた大きな体を少しかがめた。
「何だ、今から業務が」
「すぐに終わりますから」
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