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第十章・16

 時を同じくして予期せぬ人物と対面していたのは、ルキアノスだけではなかった。 「ギル、顔を上げよ」 「はい」  ザンの神闘士ギルは、法皇の間へ立ち入ることを許され、その主たる法皇と対峙していた。  もしや私を、改めて次期法皇に任命してくださるのかも、などと甘い夢を描かなかったと言えば嘘になる。  そんな思いを浮かべてしまう自分を叱咤しつつ、ギルは跪いていた。  顔を上げ、言葉を失った。他に誰もいないとはいえ、法皇が仮面に手を掛けたのだ。  確かに一度、法皇リーエンの素顔を拝見したことはある。しかし、あの時は周囲に誰もおらず、また誰も現れようもない夜間だった。  ところが今回はそれが日中、何者かが謁見を望む事もあるであろう法皇の間において、である。    法皇はそんな事など全く心配する様子も無く、のんびりとギルに語りかけた。 「お前には、この素顔を見る権利がある」 「勿体ないお言葉だけで充分にございます」 「まぁ、そう言わずに。見ろよ、ギル」 「え!?」  この声は、ジーグ!  仮面をすっかり外した法皇は、ジーグの顔を晒していた

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