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第十章・20
法皇の命を受けた神騎士たちは、皆ルキアノスの後を追ったが、それらは次第に絞られていった。
誰よりも速く飛ぶことのできた、聖獣・ザウのアデラ。
そして、誰よりもルキアノスを想う聖獣・ザンのギルが、彼に肉薄していた。
場所はすでに三次元に移っている。夜間の座標を飛ぶ彼らは、地上からみると流星のように見えたかもしれない。
アデラが、ギルが迫ってくる。
星を砕く勢いで攻撃を仕掛けてくるアデラから逃れるには!?
考えるんだ。何か策を!
未だ諦めてはいないルキアノスだ。
(必ずファタルを御護りしてみせる!)
そう、意気を振るったところで、突然体の自由が奪われた。
ギルが、ルキアノスを背後から羽交い絞めにしたのだ。
アデラに気を取られるあまりに、ギルには目が向いていなかった。
「アデラ、今だ! やれ!」
「ギル!?」
ルキアノス、一緒に死のう。
一緒に死んでくれ。
ジーグの犯した罪、この私が死んで詫びる。
ギルの思考がルキアノスに届いたその時、アデラが剣を抜いた。
甲冑をも砕き、生身を貫く一閃が二人を襲った。
致命傷だ……。
深々と斬られた体から血を流し、ギルとルキアノスは墜落を始めた。
死の間際に、思う。
ルキアノス。君が私を愛してくれたおかげで、私もジーグを愛することができたんだ。
一緒に死のう。死んでくれ、ルキアノス。
だがギルの想いは通じず、二人はそれぞれ別の場所へと墜ちてゆく。
体も、その魂さえもひとつに溶け合わせた二人は、別々の場所で死んでゆくのだ。
では、せめてこの心だけでも、君のもとへ。
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