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触って、キスして、愛し合って⑶
気持ち悪さに眉根を寄せて耐えていれば、マコトが伸び上がって俺にキスしてきた。今日ここに来て初めてのキスだとぼんやり思う。唇が離れた時、はっと息継ぎをする音が間近で聞こえた。エロいなぁ。色っぽい。
「すまん、余裕がなくて」
キスをしなかったことを言っていたらしい。たしかに、余裕ならキスの一つもするはずなのだろう。俺もそのことに今気がついたのだから、余裕がないのはお互い様だ。
「………おまえは、余裕そうに見える」
「見えるだけだ。好きな人の前ではカッコつけたい」
おまえらしいと思った。ねえ、と仕草だけでキスをねだればもう一度唇が重なる。重ねながらそっと唇を押し開くようにすると、それに答えて温い舌が唇を舐める。ひくっと喉の奥あたりが疼く。そのまま滑るように入ってきた舌を迎え入れて、舌先を絡めれば、マコトの機嫌がみるみる良くなる。調子に乗っているとも言える。
「キス、上手くなったな」
はふ、と息を吐きながらマコトがいった。キスだけはしてきたから。同室の2人の目を盗んで、学園の中でだってなんども。調子に乗って1時間以上唇をすり合わせていた時は流石に高まりすぎて熱が収まらず、帰ってきたリョウタたちと目を合わせられなかった。
「お前こそ、っぅ………」
ぞわ、と走った寒気に思わず口を閉ざした。縁を広げるだけだった中指がそろりと入ってきたから。
「痛い?」
「だいじょぶ」
「ほんとか?」
「うん」
確認するだけしてあとは無言になった。軽く腰に添えられた手が、無意識だろうが、妖しく動いてゾワゾワする。深呼吸しながらひたすら異物感に慣れるこの時間が、必要とはいえすこし苦手だ。
必死に息継ぎをしていると、中を捏ねていた指が止まる。何かと思ってそろりと目を開けたら、情けなく眉を下げたマコトがじっとこっちを見つめていた。
「な、なに……?」
「………なにか、……なんとか、気を紛らわしてやりたいと思って」
そういうことを、情けなくも正直に言っちゃうとこ。置いていかれた子犬みたいで、俺は嫌いじゃない。そう思ったらなんだか今日は頑張れそうな気がした。硬くなっていた力を息を逃して抜いてみる。
「平気だから、……だいじょぶ。お前の指、ちゃんときもちいから」
「ショウ………」
「上手くできなくて、ごめん」
いつまでも硬くなってしまうのは、やっぱり俺のせいだから。もう硬くなっているはずのマコトのモノだって、こんなことしてたら力を失ってしまう。
「ううん、上手だよ、ショウ。……けど、やっぱり辛そうだから。なんとかしてやりたい」
気が紛れること、何かないか。と、聞かれてすぐに、じゃあキスをしていてほしいと思った。伝えるのは恥ずかしい。はく、と開いた口がなにも言わないのを見て、マコトがそれを察してくれた。
「キスすればいいか?」
「…….ん」
甘えたような声に今更羞恥が湧いてくる。すぐに塞がれた唇。舌が、さっきの続きと言わんばかりの性急さで唇を割る。硬くした舌先が上顎のひだを丁寧になぞって、驚くほど下半身に熱が溜まっていく。心が、身体がほどけていく。
「ショウ、好きだ」
息継ぎの間に囁いてくれるその声に、だんだん余裕がなくなってくるのがわかった。嬉しい。この身体で、まごうことなき男の身体で、興奮してくれているのが嬉しい。好きだと言ってくれるその言葉が嬉しい。
「指増やすからな」
「ん、マコト、……キスやめないで」
「ああ」
そうやってデロデロに甘やかされて、必死に舌や唇を吸いながら高めて、高められて、そうしているうちにいつのまにかほぐされきっていた。
穴の中の、押されると変な感じがするそこをゆっくり撫でられながら、数十分ぶりにマコトは音を立てて唇を離す。濡れた唇が耳元に降りてきて、息を含んだかすれた声が「いれていいか」と泣きそうな感じに響いた。「いいよ」と答えて、足りないなと思って、「いれて」と付け足す。マコトの隆起した喉仏がうごく。「ありがとう」と言われて、お礼を言うのはこっちの方だと思った。
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