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触って、キスして愛し合って⑵
マコトと入違いに風呂に入り、準備をして、バスローブを羽織ったままベッドの前に戻ると、マコトは照明の明るさを戻してしまっていた。俺の投げたスカジャンはたたまれて背もたれにかけられていた。
「おつかれさま」
パンツ一枚でベッドに座っているマコトは、音を消しながら見ていたらしいテレビの電源を消した。
「…なに見てたの?」
「ん、あぁ、民放だよ」
「………えろいやつじゃなくて?」
「ふはは、嫉妬か。かわいいな」
別に嫉妬じゃないし、もしそうだったら一緒に見ようと思っただけだし。ていうか可愛いとか言うな。いいたいことは山ほどあったが、口からは何も出てこなかった。マコトの前にほぼ裸の状態で出るには心の準備が必要だ。その準備はまだできていない。
「安心しろ。どんなにあられもない女の姿を見るより、お前がそうやって恥ずかしそうにしている姿を見るほうがよっぽど興奮する」
安心できねえ。そんなことを言われてもじもじと近づくのさえためらっていると、急に腕を引かれた。あわててベッドに膝をつくと、膝をついた場所はマコトの足の間だった。力のついたマコトのそれがパンツの布地を押し上げているのが分かった。
「触っても?」
「もう触ってる……っ」
腹のあたりに頭をピタリとつけて、手が怪しげに尻を揉み、太ももを滑っていた。準備の終わった体はそれだけでビリビリと痺れたような感覚になる。まだ勃ちはしないけど、緊張と興奮は確実にあった。
「肌、気持ちいいな。さらさらしてる。」
「ん、…….あの、置いてあった石鹸、っ、使った」
「あぁ、あの緑のやつ?」
「なんか、オーガニック?………が、体に優しそうだったか、ひぁッ」
「おっと、すまん」
太腿の内側を指がするりと抜けていって、体が震える。マコトは手を離すと、俺を横たえるようにベッドの上に導いた。互いに無言なのがなんとなく恥ずかしかったけれど、口を開こうにも固まってしまっていた。
「風呂、大丈夫だったか?」
大丈夫、と言う聞き方は卑怯だと思う。大丈夫じゃないからだ、基本的に。自分で自分の体を作り替えていく作業は、いろんな精神力を削られていくし、体勢が難しくて所々痛くなる、けど。
「…だいじょぶ」
お前が触ってくれるんなら大丈夫だと、答えてしまう自分がいる。
バスローブの腰紐を緩める時、照明を落とすように頼んだらそうしてくれた。豆電球くらいの明るさ。マコトが上にいて、頭で電球を隠しているからマコトの顔がよく見えなかった。
ローブがはだけられて、薄い胸があらわになると、マコトがそこを凝視しているのが分かった。あまり見ないで欲しい。ケアもなにもしていない肌は、部活で焼けて、乳首も茶色だ。陶器のような白さも、色付く桜のような乳首も持っていない。さっき風呂で散々見てきたから知ってる。
初めてこういうことをするために裸になった時、頼むから見ないで欲しいとぐずるまで抵抗したのだが、マコトは、服を脱がせることは断固として譲らなかった。自分も脱ぐからおあいこにしてくれと言って。
だから、軽くマコトの体を蹴る。俺の足を割って間にいるマコトを蹴るのは簡単だった。
「お前も脱いで」
「……….ふふ、仰せのままに」
マコトはなんの躊躇いもなくパンツを脱いだ。支えがなくても上を向くくらいには勃っているそれが、嬉しいんだか恥ずかしいんだか。
「ショウは、見られるのを恥ずかしがるがな」
マコトが俺の足の間にまた戻ってくる。ソレを勃たせながらベッドヘッドのローションを手のひらに出すというなんともシュールな光景。
「俺だって、結構恥ずかしいんだぞ」
「……恥ずかしいやつがそんなぽんぽん脱ぐかよ」
「別に脱ぐのは恥ずかしくない。……見られると、流石に。あんまりまじまじ見ないでくれ。穴がいてしまう」
「そ、そんなに見てない………」
とはいえないかもしれない。だってかっこいいんだよ、薄く割れた腹筋とか、たくましい腕とか。恥ずかしくなって視線を右にずらした。たたまれたスカジャンが見える。マコトの手が丁寧にたたんだ俺の服。
「見惚れてくれてそれは嬉しいんだが、どうも落ち着かない」
そんなふうにいいながら、マコトだってさっきから俺の胸ばかり見ている。
「じ、じゃあ、お前も見るなよ、俺の」
「………俺の?」
少し待って気がついた。こいつ、エロオヤジみたいなこと考えやがって。口の端がちょっと上がったの、視界の端に映ったぞ。
「………言わないからな」
「それは残念。触るぞ」
予告に対する返事も待たず、ひたりと、ぬめる指が当たる感覚がした。ローションは人肌に温まっていた。まだ慣れない、尻に当たる濡れた感覚。
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