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秘書のオシゴト③

西に黄色…よく言われている風水のラッキーアイテムの一つ。 俺の名前は『西山檸檬』…檸檬=黄色――まさに『西に黄色』 俺自身が社長にとってのラッキーアイテムらしい。 実際、俺が秘書課に配属になり、社長の側にいるようになってからというもの、経営方針も特に今までと変わりはないのに業績が飛躍的に伸びている…のだそうだ。 原因は不明だ。 勿論、社員が頑張って仕事をしているからに違いないのだが、社長は 「西山君、君がいる限り俺も会社も安泰だ!絶対に俺から離れるな!」 と言って、黒原さんを差し置いて朝イチで俺を呼び付け、ハグを欠かさなくなった。 社長曰く『運をチャージしている』のだそうだ。 意味が分からない。 秘書という仕事にずっと就きたかったから、仕事そのものには全く不満はない。 不満どころかやりがいがあって、毎日が充実している。 ただ…社長の、はっきり言えばセクハラかパワハラか、この行為に戸惑っているのが正直なところで。 大体、いい年したオトコに(社長は確か…32才と黒原さんから聞いた)毎日ハグされて、そのオトコときたら、高学歴高身長高収入の三高で、おまけにモデルと見紛うほどのイケメンときたもんだ。 中学歴低身長中収入で童顔の俺が、いくら同性とはいえ、毎日優しくハグされて、時々髪を撫でられて、今日なんて、髪の毛にキス…された…勘違いしそうになるって。 社長、いい匂いがするし。 ハグされると気持ちいい……いや、恋愛感情はゼロだ! …このちょっと困った社長は、世が世ならお殿様としてこの地域一帯を治めるくらいの由緒正しいお家柄なんだそうだ。 風水にこだわりがあるのは先祖代々の家訓で、社長はこれくらいで治まっているが、先代はもっと強烈だったらしい。

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