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秘書のオシゴト⑥

遡ること…あれは就職活動真っ最中の時―― 就職したい候補を絞った数社の中で、ダントツに心惹かれたのがここだった。 業績も申し分ない上昇傾向にある安定した老舗の企業で、自分の能力を発揮できると、何故かカンみたいなのが働いた。 社内の雰囲気も大いに気に入り職種もさることながら、若干潔癖症なところがある俺は、整理整頓された社内に強く惹かれて、もうここしか就職しない!とまで思うようになっていた。 絶対にここに入りたい、とさり気なく嫌味にならない程度のアピールをしつつ、試験に備えたのだった。 そして迎えた入社試験。 目の前にはそれぞれが独特のオーラを纏った美丈夫達が座っており、机上の札には『社長』『人事部長』『営業部長』『経理部長』と書いてあった。 4人とも若い!それにイケメン! ここって、顔面偏差値の高い奴しか採用しないのか!?揃いも揃って社長以下部長がイケメン揃いって、どんな会社なんだ? まさか社員全部がイケメンってことないんだろうな? ふえぇ…圧倒される…いや、負けるもんか! ここに入りたくて努力してきたんだ! 俺はイケメンでなくてもここに入りたいんだ! くっ、と腹に力を込めて背筋をしゃんと伸ばす。 気分が落ち着いてきて顔が締まり、目に力が戻ってきたような気がした。 社長が『おっ?』というような顔をした。 よし。俺に興味を持ったらしい。いける! …一通りの質問が終わった。 マニュアル通りかもしれないが、アレンジして自分の言葉で伝えることができた…と思う。 すると社長が 「西山君、これは個人的な質問なんだけどいいかな?」 「はい。」 「『檸檬』って名前、誰がつけたの?」 へ?名前? 「母です。妊娠中つわりが酷かった母は、檸檬だけを口にすることができたらしく『こんなに檸檬が好きなんだから生まれてくる子の名前は檸檬にする!』と周囲の反対を押し切ってつけたそうです。」

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