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社長の真意②
「…セクハラ?気に病んでる?…俺のせいで?」
俺はウインカーを上げて車を路肩に寄せた。
運転しながらだと注意散漫になって危険だ。
こうなったら、言いたいこと言ってやる。
「ほーら、分かってない。
この間は、満もバカじゃないからって思って、オブラートに包んで忠告してやったのに。
小さい頃から名前のせいで苛められてきて、やっとそれを克服したと思ったら、大人になってのこの仕打ち。
『西に黄色』の彼を手元に置いておけば全て上手くいく、なんてお前が勝手に作り上げたイメージのせいで、されたくもないハグに毎日付き合ってる。
社長命令だもん、従うしかないよね?これってパワハラだよ。
交渉が失敗した時は自分のせいだと責められるかもしれない、なんて今頃怯えてるかも。
何よりも、お前は彼自身を認めてるのか?
ただアイテムとして側に置きたいだけなのか?
…さっきのお前の発言が全てだよな。
彼、退職するかもしれないよ。
どうしてくれるの?あんないい子を俺は手放したくないんだけど。
…もしそうなったら…御目付役として、俺は迷わず会長に進言するよ。」
「パワハラ…退職…」
ぶつぶつと呟きながら、バックミラーに映る満の顔が段々と曇っていった。
ちょっと言い過ぎたか、いやこれくらい言わないと、コイツは分からない。
やっぱり無自覚だったのか。
普通、少しでも嫌な顔されたら気付くだろうが。
まぁ、西山君は感情を顔に出すタイプではないから、満が気付かないのも無理はないのかもしれないが…
「…俊樹…俺、そんなつもりで彼に接してた訳じゃないんだ…そんな、物みたいに思ったこともない…」
「でも実際に朝だけじゃなくって、さっきみたいに側から見たら験担ぎか呪 いみたいな扱いしてたじゃないか。」
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