12 / 371

社長の真意②

「…セクハラ?気に病んでる?…俺のせいで?」 俺はウインカーを上げて車を路肩に寄せた。 運転しながらだと注意散漫になって危険だ。 こうなったら、言いたいこと言ってやる。 「ほーら、分かってない。 この間は、満もバカじゃないからって思って、オブラートに包んで忠告してやったのに。 小さい頃から名前のせいで苛められてきて、やっとそれを克服したと思ったら、大人になってのこの仕打ち。 『西に黄色』の彼を手元に置いておけば全て上手くいく、なんてお前が勝手に作り上げたイメージのせいで、されたくもないハグに毎日付き合ってる。 社長命令だもん、従うしかないよね?これってパワハラだよ。 交渉が失敗した時は自分のせいだと責められるかもしれない、なんて今頃怯えてるかも。 何よりも、お前は彼自身を認めてるのか? ただアイテムとして側に置きたいだけなのか? …さっきのお前の発言が全てだよな。 彼、退職するかもしれないよ。 どうしてくれるの?あんないい子を俺は手放したくないんだけど。 …もしそうなったら…御目付役として、俺は迷わず会長に進言するよ。」 「パワハラ…退職…」 ぶつぶつと呟きながら、バックミラーに映る満の顔が段々と曇っていった。 ちょっと言い過ぎたか、いやこれくらい言わないと、コイツは分からない。 やっぱり無自覚だったのか。 普通、少しでも嫌な顔されたら気付くだろうが。 まぁ、西山君は感情を顔に出すタイプではないから、満が気付かないのも無理はないのかもしれないが… 「…俊樹…俺、そんなつもりで彼に接してた訳じゃないんだ…そんな、物みたいに思ったこともない…」 「でも実際に朝だけじゃなくって、さっきみたいに側から見たら験担ぎか(まじな)いみたいな扱いしてたじゃないか。」

ともだちにシェアしよう!