「…そんな風に見えてたのか？」 「…呆れた…ほんっとうに自覚なしかよ。 掛ける言葉もねぇや。 そう見えてるからそう言ってるんだろ！ 恋愛感情のない、それも自分と同じ男に毎日毎日抱きしめられてみろ。 オカシイと思うだろ、普通。嫌がって当然。」 「マジか…西山君、俺のこと何て言ってた？」 「ひたすら困って戸惑ってる。 『恋人や奥様がいて誤解されたら申し訳ない』 『名前だけで採用されたのか、何だかモノみたいで、自分の仕事ぶりをどう思ってるのか』 ってさ。健気じゃないか。 あ、俺ん家(ち)の養子になって『黒い檸檬』にしてくれ、そうすればラッキーアイテムじゃなくなって、素の自分を見てもらえるから、とも言ってたぞ。」 社長(満)はいよいよ押し黙って俯いてしまった。 ピクリとも動かず固まっている。 キツく言い過ぎたか？ いやいや、しっかり反省しろ、反省。 しかし、その姿を見てかわいそうになり俺もこれ以上追い込むのは止めて黙っていた。 こんなに落ち込む満を見るのは、多分初めてのことだと思う。 お互いに黙ったまま……どのくらい沈黙の時間が流れただろうか。 徐(おもむ)ろに満が口を開いた。 「…かわいくって仕方がないんだよ。」 「ん？何が？誰が？」 唐突な告白に、頭の中は「？(クエスチョン)」マークで埋め尽くされた。 満はモジモジと身体を揺らしながら、頬を染めて言った。 「西山君…」 「…え？」 「西山君だよ！ ラッキーアイテムっていうのは照れ隠しだ。 それにかこつけてハグしてたんだよ。 本音を言うと、かわいくって愛おしくってならんのだ。」 唐突な告白に今度は俺が、瞬間フリーズする番だった。 「…満…まさかお前……バイ!?今まで何人も女と付き合ってたよな？」