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社長の真意⑤

見る間に耳まで赤く染まる満の熱が移ったのか、俺まで頬に火照りを感じてきた。 「ん〜、まぁ、その…お前、本気なんだな?」 満は俺をキッと睨むと逆切れしてきた。 「本気だから困ってるんじゃないかっ!」 「…ごめん…そうだよな…」 はあっ、と思わせぶりにため息をつき、改めて満を見た。 イケメンだよな、相変わらず。 相手は選り取り見取りだろうに、どうして男性をよりによって部下を? 俺の物言わぬ声を感じ取ったのか、満はぼそりと呟いた。 「檸檬だから…アイツだから恋に落ちたんだ…」 憂いを帯びた横顔は、男の俺でも身震いするほどに美しかった。 暫く見惚れていたが、いやいや、俺が惚けてどうするんだと、首をふるふる振って正気に戻り告げた。 「じゃあ、まどろっこしいことしないで、ストレートに告白すればいいだろ? お前らしくないじゃん。」 「それができれば、とっくにそうしてるよ! 振られた挙句に退職でもされてみろ、どうするんだ?お前、責任取ってくれるのか?」 「何で俺が!?矛先が違うじゃん!」 「…そうだよな。 俺、振られて拒絶されるのが怖いんだ…そうなった時にどう対処していいのか分からない。」 「お前、今まで振られたことなんかただの一度もないからな…嫌でも相手が寄ってきてたし。」 「………………」 目尻を(ぬぐ)い黙り込んだ満が、何だか気の毒になってきた。 「告白する勇気はない、側に置いておきたいし構いたい、だからと言ってラッキーアイテム扱いはダメだろう。」 「…それしか思いつかなかったから。」 「アホか。」 「………………」 「泣くな!とにかく、彼は嫌がってるんだから、ハグはもう止めろ。 “普通に”接すること。いいな?」 「……分かった…」 「あっ、会議に間に合わなくなる! この話は保留だ。また後で話そう。」 俺は落ち込んだ満を気にしつつもギアを入れた。

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