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秘書の真意⑤
side:檸檬
黒原さんが殴られそうに見えて飛び出した結果、社長に抱きつく体勢になってしまった。
程なくして強く抱きしめ返され、欠けていたピースが埋め込まれていく感覚に陥る。
心地イイ。
俺は男なのに。社長 に抱きしめられて気持ちイイなんて。
気持ち良過ぎて泣いてしまっていた。
緩んだ涙腺は元に戻ってはくれない。
耳元で「泣くな」と何度も優しい声がする。
苗字ではなく『檸檬』と名前を呼ばれる。
髪を撫でられ、頬を目尻をそっと拭われる。
久し振りの社長の濃い香りに包まれ、抗うこともできずに逞しい腕に身体を預けている。
社長が俺の両手を取り、自分の首に巻き付けた。
そのまま子供のように抱きかかえられた俺は、ソファーに座り直した社長の膝の上に跨るような格好になっていた。
そのせいで、もっと密着してハグどころの騒ぎではなくなっている。
心臓がバクバク踊って口から飛び出しそうな勢いだ。
それでも離れたくない思いが強くて、母親にしがみ付くコアラのように抱きついていた。
そうか…俺は社長にこうしてほしかったんだ。
likeではなくlove……
憧れはいつの頃からか恋愛に変わっていた。
社長の手は、俺の頭から背中を滑り双丘をするりと折り返しては、何度も何度も優しく撫で摩る。
その間
「檸檬好きだ、愛してる」
「お前だけ、お前だけがほしいんだ」
「頼む、俺を愛して」
「愛してる」
甘い愛の言葉を囁かれ、心も身体も蕩けていく。
耳朶に触れるか触れないか、微妙な距離を保っていた社長の唇が、横にスライドして俺の唇に重なった。
唇をはむはむと嵌まれて、擽ったさに首を竦めて逃げを打つが、社長の唇が追いかけてきてまた嵌まれる。
そうするうちに滑った舌先を捻じ込まれ、口内を愛撫される。
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