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秘書の真意⑥

上顎をなぞられた途端に背中がぞくりと震えた。 「んっ」 思わず零れた吐息混じりの声。 ハッと我に帰り、社長の首に絡めていた両手を外し、ぐいっと肩を押した。 そして腰に巻かれた腕をそっと避けてから、慌てて彼の膝から滑り降りた。 「檸檬?」 訝しげに問い掛けてくる声と顔。 「…わっ、私はあなたとは不釣り合いな人間で…オマケに男で…愛される資格なんてないんですっ! …煽るようなことになって申し訳ありませんでした。処分は如何様(いかよう)にも受けます。 …申し訳ありません、今日はこれで失礼させて下さいっ。」 一気に捲し立てると、深く一礼をして鞄を引っ掴んだ。 「檸檬っ!待て、檸檬!」 社長の叫び声を振り払うように部屋を出ると、エレベーターを待つ間ももどかしく、階段を駆け下りた。 息が切れ足がもつれそうになる。 それでも何とか1階に辿り着くと、何処をどうやって帰ったのか記憶にないが、気付いた時には自宅の玄関先にへたり込んでいた。 さっきまでの行為は何だったんだろう。 思わず唇に触れた。 ぶわりと熱が蘇る。 社長が触れたところ全てから、快感の波が押し寄せてくるようで、俺は自らの身体を抱きしめていた。 『檸檬、愛してる』 耳元で囁かれた台詞を思い出し、下半身にぞくりと甘い痺れが走った。 「え…嘘…」 急激に勃ち上がった俺自身が、スラックスの中で圧迫され悲鳴を上げている。 何かに導かれるように、かちゃかちゃと音を立てベルトを外しチャックを下ろすと、既に色を変えた下着が目についた。 それを見た瞬間、俺の中で何かが弾け飛んだ。 乱暴に靴を脱ぎ、よろよろとベッドに辿り着くと震える手で着ている物全てを脱ぎ捨てた。 手足の先は冷え切っているのに、妙に身体の芯が熱くて治まりがつかなくなっていた。

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