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秘書の真意⑦
頭の中でさっき社長に言われた言葉達がリピートしている。
『檸檬好きだ、愛してる』
『お前だけ、お前だけがほしいんだ』
『頼む、俺を愛して』
『愛してる』
「社長…」
震える手で俺自身を包み込むと、濡れそぼったそこも熱を持ちびくびくと脈を打っていた。
逃げ出さなかったら、こうやって触ってもらえてたんだろうか。
蕩けるようなキスもずっとしてもらえてたんだろうか。
沢山『愛してる』って言ってもらえてたんだろうか。
でも…俺は男で………
そう考えている間にも右手は勝手に動き始め、俺のイイところを攻めてくる。
「んっ…はっ…そこっ…」
リズミカルな動きは射精感を高めていく。
「…もっと、そこ…んっ、社長…」
残った左手が全身をくまなく撫でる。
社長が俺を愛撫してる…目を瞑ると、自分の手なのに社長に全身愛されているようで、俺は意識が飛びそうになっていた。
夢と現実の境も分からないまま、俺は夢の中の社長に抱かれ翻弄されていた。
『檸檬、イケっ!』
「ああっ」
手の平に生温かな感触が…脳天まで駆け抜けた快感の余韻に浸りながら、薄っすらと目を開けた。
見慣れた天井、匂い。ここは俺の部屋だ。
まだ甘く痺れた下半身は重怠い。
ふと右手を持ち上げてみると、白濁の液が絡み付いていた。
「俺…社長でイっちゃった…」
ひとり言を呟くと、何だか情けなくなって涙が出てきた。
俺、あの人のこと好きなんだ。
ハッ
明日からどうしよう。社長の顔をまともに見れるんだろうか。
あ、そういえば黒原さんはあの時いたんだろうか?見られてた!?
血の気が引く。全身に押し寄せる絶望感。
何てことしちゃったんだろう。
俺、多分クビだな。
私物置いてるから取りにいかないと。
その前に退職届書かなくちゃ。
ぐるぐる巡るマイナスの感情に苛まれながら、俺は取り敢えずシャワーを浴びるために立ち上がった。
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