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内緒(1)

ドタバタの新婚生活(といってももう既に一緒に暮らしてたから、取り立てて変わりはないけど)やっと満さんの誕生日が分かった。 「やだよ。檸檬とまた一つ年の差が出るじゃないか。ただでさえオジサンなのに。そんな認識したくないから教えない。」 そんなことを言って散々抵抗していたのだが、俺には黒原さんという味方がいる。 密かに難なく情報を手に入れて、まだ日にちがあることに安堵した。 欲しい物は何でも手に入るひと。何がいいかな? 何を送れば喜ぶのかワクワクしながら考えに考えた。 何か手作りで…目立たないけど存在感のある物にしたいな。 俺でも簡単に作れて、俺が出せる値段の物。 ついでに俺とお揃いで、いつも身につけていられる物にしようか。 満さんは俺のものだ、って暗にアピールしたい。 へへっ。 んー…何がいいんだろう…そうだ! お世話になってる手芸店のお姉様達に相談してみようかな。あの人達なら何かいい知恵を出してくれそうだ。 今日、帰りに寄ってこよう。 そんでもって、当日はお休みもらって、フルコースとまではいかないけれど美味しいもの作ろう! そしてそして、その後は……うへへっ♡ 「檸檬、何かいいことでもあったのか?」 「えっ!?普通ですけど。」 「頬が緩んでる。」 「あっえっと、朝、社長がお留守の時に、黒原さんからマカロンいただきました!」 「ちっ、黒原め…スイーツで檸檬を手懐けようとしやがって…」 「何でマカロンくらいでそんな言われ方しなくちゃならないんですかねぇ。 ほらほら、文句言っている間に出かける準備してくださいよ、ほら!」 「れーもーんー!黒原が虐めるぅ!」 「お望みならお尻でも叩きましょうか?」 漫才のような掛け合いに吹き出しながら『いってらっしゃい』といつものようにハグをして、ご機嫌の直った社長を送り出した。

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