170 / 371

新婚初夜(13)

やっとのことで起き上がってベッドに座り(クッションやらタオルやら腰回りにガードされた)、湿布の貼られた腰を摩りつつ、何故か介護よろしく食べさせられている。 「檸檬、はい、あーん♡」 語尾にハートがつくほどに、嬉々としてスプーンを俺の口元に運ぶ満さん。 お腹の空いてる俺は、もう諦めてされるがままだ。 食べ終わって口元をティッシュで拭かれた俺は、カスカスの声で言い放つ。 自分が煽ったことを棚に上げて… 「ご馳走様でした……ところで満さん。 こんな動けない程にえっちするのは、もうなしですからねっ!」 「ええーっ、檸檬…そんなぁ……」 満さんの見えない耳が垂れた。尻尾も垂れた。 きゅぅーん 鳴き声も聞こえる。 ぷん、と横を向き視線を外すと、満さんが情けない声を出す。 「れもぉーん……ちゃんと加減するからぁ…ねぇ、れもぉーん……」 きゅーん きゅうーん まるて捨てられた子犬だ。 ちろ、と横目で満さんを見ると、眉毛も八の字に下がっている。 俺は自分がやったにも関わらず、こうなった責任を満さんになすり付けてる。 理不尽だよなぁ。誘ったのは俺なのに。 もっと優しくしてね、と素直に言えない俺。 もっと他に言い方があるだろうに。 結婚して翌日に喧嘩っぽいのはヤダな。 こんなの、俺らしくない。 「……満さん……」 「何!?檸檬、何!?」 「…煽ったのは俺が悪いけど……せめて動ける程度に加減して…愛して。」 「れーもぉーーんっ!」 「ぎゃあーっ!痛い、痛い、痛ぁーーいっ!」 「うわっ、ごめん、檸檬ごめんっ!」 抱きついてきた満さんをダイレクトに受け止めた俺は、腰に衝撃を受け撃沈した。 結局、3日間俺は動けなくなった。 まぁ、最後にひと言余計なことを言った俺が悪かったんだけど。 満さんが大反省したのは、言うまでもない。

ともだちにシェアしよう!