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内緒(5)
「知ってるも何も、俺達の結婚指輪、ここで物凄くお世話になったんですよ!…凄い偶然…まさか、多恵子さんの旧姓って『新藤さん』!?」
「ええ、そうよ。じゃあ父とも会ってるのね?」
「はい!うわぁ…嘘みたい…」
とそこへ
「多恵子!えらくご無沙汰じゃないか。元気だったか?
あ、失礼、お客様もご一緒……あれ?檸檬君!先日はご利用いただきありがとうございました。
いらっしゃいませ。でも、どうして多恵子と?」
「お父さん!勿論ご覧の通り元気よ。
奇遇ね。檸檬君がうちのお客様だったなんて。
あのね、相談があってきたのよ。ビジネスだからね、これは。」
「全く…さ、檸檬君、入って入って!」
吃驚した。
新藤さんが多恵子さんのお父さんだったなんて。
奥に案内されて、多恵子さんとの接点やら訪問の目的を手短に新藤さんに説明した。
「それはご主人様喜ばれると思いますよ。
デザインもいいね。
そうだ。もしよければここで作りませんか?
一生物で使ってもらえるように、ちゃんとした物で。
ご予算もおありでしょうし、勿論お値段はしっかり勉強させてもらいますよ。」
「え、いいんですか?」
「はい。うちの大切なお客様ですし、多恵子のお客様ともあれば当然。」
「檸檬君、よかったわね。
お父さん、お値引きしっかり頼んだわよ。」
「ははっ、お前に言われなくても。
では早速ですが…」
宝石の良し悪しが全然分からない俺は、取り敢えずの予算をドキドキしながら伝えた。
新藤さんは「十分過ぎるご予算ですよ」と言ってくれてホッとした。
そして材質の違うプレートを幾つかと、俺達の誕生石のサンプルを用意してくれた。
「使うご本人の誕生石を少し大きめにして、お相手の誕生石を少し小さめにして寄り添うようにされても素敵ですよ。」
「あっ、それいいですね。そうします!」
満さん、喜んでくれるかな…
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