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内緒(7)
手持ち無沙汰で、見るとはなしにテレビを付けっ放しにしていた。
クッションを抱きしめて横になったり座ってみたり、落ち着かない。
携帯をちらちらと何度も確認するが、メールすらも着信がない。
どんな接待なんだろう。
きっと綺麗な女性も一緒なんだろうな。
俺なんかのこと忘れて、ふらっとそっちに行っちゃったりして。
浮気…なんてないよね…
ぐるぐると嫌な考えの方向にいってしまう。
大丈夫!満さんに限ってそんなことはない!
でも…早く帰ってきて、ぎゅってしてほしい。
「檸檬、愛してるよ」って耳元で囁いてほしい。
満さん、俺、寂しいよ…とっても情緒不安定な俺。
あー…俺ってこんなに女々しくて嫉妬深くて寂しがり屋だったのか…
左手の甲を照明にかざしてみた。
薬指にキラリと光る指輪。
『檸檬、俺はここにいるよ』って言ってくれてるみたいで、少し気持ちが上がってきた。
起き上がって、ネクタイピンのデザイン画を持ってきた。
仕上がったらどんなに素敵になるんだろう。
満さんが喜ぶ様子を想像してにやにやしながら眺めていると、突然携帯が鳴った。
満さんからのメッセ!
『檸檬、遅くなってすまない。今から帰るよ。』
『はい!お気を付けて!お待ちしています。』
慌てて返信すると、既読になったまま返事はなかった。きっと大急ぎで向かっているのだろう。
俺は見つからないようにデザイン画を鞄に隠し、クッションをばふばふと叩いて元通りにセットすると、お茶の用意をしにキッチンへ向かった。
それから1時間程して俺が待ちくたびれた頃、玄関の鍵が開く音がした。
満さんだっ!
「れーーもぉーーーーーんっ!」
勢いよくドアを開ける音と、思いっ切り俺を抱きしめる熱い腕に巻かれた。
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