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溺れていく①
side:檸檬
寝室にひとり取り残された。
どうしよう。ここまで連れてこられてしまった。
今なら間に合う。社長が戻ってこないうちに、そっと出ていけばいい。
なのに…身体が動かない。
身体は熱を持って、じっとりと手の平は汗をかいているというのに、妙に頭の芯は冷えている。
社長にキスしてほしい、キスしたい。抱きしめられたい、抱きしめたい。なんていう欲望が沸き起こってきて止まらない。
どうしよう。
俺、絶対ここで抱かれる。でも全然嫌じゃない。
そうしてほしい。それしか考えられない。
ここから…どうやって帰ればいい?どんな顔して明日出社すればいい?
あ…さっきお風呂に入ったけれど、男同士って確かアレをアソコに…うわぁっ、ヤバい。
「シャワーを浴びさせて下さいっ」って頼めばいいのだろうか?自分で指を突っ込んで慣らせばいいんだろうか?
次から次へと纏まらない考えが、とりとめもなく湧き上がる…ああ〜っ…どうしよう、なんて身悶えして考えているうちに、社長がバタバタと大きな音を立てながら戻ってきてしまった。
…腰にタオルを1枚巻いただけの姿。
凄い筋肉…逞しい…貧相な俺の身体とはまるで違う。カッコいい。エロい。
「檸檬…」
優しいトーンで名前を呼ばれた。
それだけで、ただそれだけで気持ちが高揚してしまう。
社長はゆっくりとした動作で俺のそばに来ると、俺の頬をするりと撫でる。
これから始まる愛の時間を思うと、恥ずかし過ぎて思わず目を閉じ大きく息を吐いた。
頬に当てられていた手がTシャツの裾を掴むと、母親が小さな子供にする様にするりと万歳させられて脱がされてしまった。
上半身が晒される。
肌に直接社長の匂いが纏わり付いてくる。
上から下へと視線が肌の上を滑り、再び視線が絡まった時には、俺はもう何も考えることができなくなっていた。
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