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聡子さん②

一体どんなひとなんだろう…当主より権限を持つらしい大奥のお局様。 テレビや映画でよく見るあの光景が目に浮かんだ。 ぶるっ 思わず身震いすると、社長が俺を抱き寄せ 「心配いらない。俺が必ず守るから。」 と言ってくれた。 その温もりに身体を預けかけ、ふと視線を上げると…ニヤニヤする黒原さんと目が合った。 「うわぁ――っ!」 慌てて社長の腕から抜け出すと、びゅんっ、とドアの近くまで飛び逃げた。 ヤバい、マズい。ここは会社だ。 檸檬、しっかりしろ! 公私混同は厳禁だ! 腕をクロスさせ、俺の形の空気を抱きしめた格好の社長はフリーズし、黒原さんは肩を震わせて笑っている。 「くっくっくっ………じゃ、そういうことで、今日は何があっても定時に終わらせます。 社長、西山君、よろしくお願い致します。」 「…お願い致します…」 「…よろしく…」 俺、とんでもないひとを好きになっちゃったのかもしれない… ふわふわとした気持ちのまま、その日の業務に突入した。 粗方仕事も終わり、さっさと片付け始めた16時頃…黒原さんの携帯が鳴った。 「誰だよー、こんな時間に私用の携帯に…」 文句を言いながら画面を見た黒原さんは、顔をピッと引き締め、直立不動で電話を取った。 「はいっ!俊樹ですっ! 本日はお忙しいところ… えっ!?そんな急に!?………はぁ… はぁ…はい…………はい、承知致しました… はい、では後程よろしくお願い致します。」 話しながら俺の方をチラチラと見るから、俺に関係することだと心臓が跳ね始めた。 電話を切った黒原さんは真面目な顔をして 「西山君、聡子さんが君も一緒に来て欲しいって……大丈夫?行ける?」 うわぁ…ご対面だ…俺、大丈夫かな… 「…は、はい。だ、大丈夫ですっ。」 「社長に伝えてくるね。」 バタバタと社長室に消えて行った。

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