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修行スタート!②
瞳さんの叱咤激励を受けながら、俺は夢中で身体を動かした。
廊下なんて、小学生以来のダッシュ拭き。
最後の方は太腿パンパンで、足がつりそうになった。
ふと、某県の小学校跡地で行われてる雑巾掛けレースのニュースを思い出した。
これ毎日やってたら絶対に優勝する。
「はい、OK!」
取り敢えず合格点を貰って、一気に力が抜けた。
朝イチでこれ?
一日持つのか、俺の体力と気力。
明日はきっと筋肉痛だ。
姑のイジメよろしく、障子の桟を人差し指でツッと撫でられた時にはゾッとしたが。
「初めてにしてはまぁまぁね。
男性にしては割と細やかみたいだし。」
「あの…やっぱり俺、歓迎されてない…ですよね?」
「そうね。両手を上げて大歓迎、とはいかないわね。
でも、満様がお決めになって、聡子さんが受け入れたんだから、私達はとやかく言う権利はないの。
私達は言われた通りにあなたに教えていくだけだから。」
ズバッと言われて、ちょっと凹んだ。
でも、裏でコソコソ言われるより、ハッキリ言ってもらったほうがいい。
「分かりました!
ハッキリ仰って下さってありがとうございます!
俺、精一杯やりますから色々と教えて下さい!」
瞳さんは俺を一瞥すると
「しっかりおやりなさいね。」
と言った。
それが表面上だけなのか、彼女の表情からは読み取れなかったけれど、一応教えてくれるらしいことに安堵した。
何となく気不味い雰囲気で雑巾を片付け、台所へ戻ると、ご飯の炊き上がる匂いがしていた。
「私達はここでいただくのよ。」
台所のすぐ隣の部屋に、5人分の食器が準備されていた。
「昨夜のうちに満様達はお帰りになったから、この時間からいただけるの。
お泊まりの時はご当主やお客様優先だから、時間はズレるわね。
ま、臨機応変に。」
全員揃って黙々と食事が進む。
あ…味噌汁美味しい。しっかり覚えて満さんに作ってあげよぉっと。
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