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修行スタート!⑥

その日の午後からは『華道』のお稽古。 嫌いじゃないからワクワクしていた。 机に置かれていたのは大小の向日葵とモンステラ、それと薄いピンクと薄い紫のトルコキキョウに白のカラー。 「檸檬さん、自由に生けてごらんなさい。」 「はい。」 聡子さんは物言わぬ視線で『あなたにできるかしら?』と告げてくる。 へんっ。見てろよ。 小ぶりな黒の花器を選んで、向日葵を吟味する。 躊躇なく花を触る俺を聡子さんは面白そうに見ている。 「檸檬さん、お花を生けたことがあるの?」 「はい。高校で3年間、授業で習いました。」 「そう…」 パチン パチン 水切りもちゃんとして… 高さはこのくらいかな。 足元が見えないように、これをこうして… 色のバランスはこんなもんか。 水面を隠すように大小の向日葵をリズミカルに並べ、1番左に大きなモンステラの葉っぱを。 右側にスッとスタイルの良いカラーを立て、トルコキキョウをうるさくない程度に散らした。 「できました!」 聡子さんは何て言うだろう。 ドキドキしながら待っていると 「…中々独創的ね……悪くないわ。」 ん?それって褒めてもらった? そう言えば、授業中も『あなたの生け方は独特ね』と言われてたっけ。 「これでも悪くないけど、こうしたらもっと良くなるわ。」 そう言った聡子さんがチョイチョイと手直しをすると、ぐっと見栄えがするものが出来上がった。 まるでテレビの天才凡人を決める番組の先生みたいだ。 「凄い!カッコいい!」 「檸檬さん、筋は悪くないわ。 一生懸命お稽古したら、そこそこにはなりそうね。」 「ホントですか!?」 「精進あるのみ。お部屋に飾っておきなさい。」 「はい!」 へへっ。そこそこにはなる、って。 “ド下手くそ”って言われなくてよかったぁ。 ドヤ顔で部屋に持って帰った。 ビタミンカラーの向日葵が元気をくれる。 『檸檬、ファイト!』って励まされてるみたいだ。 そのあとは台所に入ることを許された。

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