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修行スタート!⑦

出汁の取り方、“さしすせそ”の調味料(言葉は知っている。俺は今まで麺つゆメインで済ませていたのだ)、食器類の取り扱い、その他諸々を順子さんからレクチャーされる。 「麺つゆ…」 そう絶句した順子さんは、腕まくりをすると 「檸檬さん、鍛え甲斐があるわ。」 とほくそ笑んだ。 きっちり計量スプーンやカップで調味料を図り、キッチンタイマーでアラーム通りに仕上げていく。 「ほら、味見してごらんなさい。」 「…………美味しい!」 「でしょ!?満様やお客様に召し上がっていただくのだから、金山家の味を守っていってもらわないと。 でも、包丁の使い方もそれなりだし、ちゃんと自炊してるってのが分かるわ。 檸檬さん、あなた見かけによらずキチンとした生活してきたのね。麺つゆはいただけないけど。」 「見かけによらず、って…」 「見た目がね、今時の若者って感じでチャラいの。パッと見、遊んでそうな感じで。 お顔立ちが派手なせいもあるのかしら。 どうして満様があなたを選んだのか理解に苦しんでいたの。 遺産目当てで騙されてるんじゃないかって。 ………思い込んでてごめんなさいね。」 「いえ…」 そんな風に思われてたんだ。 だからみんな、俺が男だというのも加えて何となく余所余所しくて、ちょっぴり意地悪されてたのか。 出来上がった煮物は味が染みて美味しかった。 味噌汁も出汁がしっかり出てて、これもまた美味しかった。 アジも焦げ目がパリパリでふっくらと焼けていた。 けど。 何だか凹んでいる。 ハッキリ言ってもらえて良かったけど、あまりにハッキリ過ぎて凹んでいる。 他人の感情に敏感で、争い事が起こる前に察知して皆と卒なく波を立てないように付き合ってきたから『嫌われる』という経験がなかった。 ある意味衝撃だった。 1日の仕事を全て終えて、部屋に戻ってきた。 向日葵達が『お帰り!お疲れ様!』と迎えてくれる気がした。 「ありがとう。ただいま。」 そう言葉にしたら、ぽとり…涙が頬を伝った。

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