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修行スタート!⑧

携帯が鳴った。 満さんだ! 愛おしむように両手で携帯を握りしめた。 画面を開くと 『檸檬、お疲れ様。 ご飯は食べてるか? 愛してるよ。』 既読になってるから、すぐに返信しなきゃ。 変に思われる。 でも、指が動かない。 携帯を抱きしめると泣けてきた。 一頻り泣いた後 『今日はお花を生けて夕食も作らせてもらいました。 食欲旺盛! 満さん、大好きです!』 そして、向日葵の写メと共に送信した。 すぐさま、ハートを撒き散らす猫のスタンプが送られてきた。 くすっ すかさず、ハートを抱きしめて照れる猫のスタンプを送り返す。 それは瞬時に既読になった。 一日の終わりに、思いを込めたたった3行の文章と、送り返す1個のスタンプ。 文字じゃなくて声が聞きたい。 たったひと言、名前を呼んでくれるだけでいい。 優しく髪を撫でてほしい。 触れ合いたい。 抱きしめてキスしてほしい。 あの逞しい胸に縋り付きたい。 膨れ上がる満さんへの思いに、俺はまた、泣いた。 男のくせに、とか言われても思われても構わない。 俺はその夜、流れる涙を止めることなく携帯を抱きしめて眠った。 翌朝、悲惨な顔にため息をつきつつ時間前に台所へ向かう。 パンパンに腫れ上がった目で現れた俺に、皆が口々に 「あらやだ。檸檬さんどうしたの!?」 「イケメンでもこんな顔になるのねぇ。」 「今更冷やしても遅いかしら。」 等と心配の声を掛けてくれた。 「すみません、大丈夫です。 昨夜ちょっと悲しい動画を見てたら泣いちゃって。 ご心配掛けてすみません。 それだけなので、本当に大丈夫です。」 「そうなの?じゃあ、今朝は台所ね。 朱音さん、見てあげて。」 「はーい。檸檬さん、お出汁取ってくれる?」 「はい。」 昨夜の手順を思い出しながら、丁寧に澄んだ出汁を取っていく。 朱音さんは黙って見ている。 口出しをされないということは、これでいいんだな。 安心してナスとみょうがの味噌汁を作った。

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