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手芸店にて①
俺は翌日、聡子さんの『できるものならやってごらんなさい』的な視線を背中に受けつつ…店で相談する時間と帰宅時間を逆算して、バスと電車の行き帰りの時間を入念に確認して出発した。
懐かしいな。
高校を卒業してからも年に何回かは顔を出していたんだけど、ここ最近就職してから随分ご無沙汰で…皆元気でいるだろうか。
「おはようございまーす。」
「いらっしゃいませー!
あら…檸檬君じゃないの!お久し振りっ!相変わらずイケメンねぇ。
どう、元気にしてた?あなたどうしてたの!?ちゃんと仕事行ってるの?
イケメンが来ないと活気が出ないのよ。
偶には顔出してよね。」
「あははっ。イケメンじゃないんですけど。
お元気そうで何よりです。
改めて…ご無沙汰してます。」
チーフの大畑さんに、肩を叩かれながら満面の笑みで迎えられた。
「相変わらず細っちいわね。ご飯食べてるの?
就職したのよね?慣れた?」
殆どの文に“?”マークが付いている。
さっきから怒涛の質問攻めだ。
きゃぁ――っ!!!
クスクス笑いながら答えようとしたら、奥から黄色い叫び声が聞こえた。
ドドドドドッ、と地響きが聞こえそうな勢いで走ってきたのは、店長のすみれさんだ。
「檸檬くぅ――んっ!」
がしっ
「ぐえっ」
「……店長、檸檬君、窒息します。
店内 で警察沙汰は嫌ですよ。」
「あははっ、ごめんごめん。
檸檬君、久し振り。元気そうね。いらっしゃいませ。」
「はぁはぁ…店長、ご無沙汰してます。
相変わらずお元気そうで何よりです。」
「もう、ちっとも顔見せないんだから。
出禁にしちゃうぞ。」
「あははっ、ごめんなさい。
忘れてた訳ではないんですけど。」
「まぁ、いいわ。許してあげる。
ところで今日は何をお探し?久し振りに元副部長のお手並み拝見ね。」
「実は…」
店長と大畑さんは俺のリクエストを事細かに聴いてくれた。
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