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心配性の当主①
side:満
突然檸檬と引き裂かれてから…
姿が見えない。
匂いを感じない。
声が聞こえない。
頭を撫でれない。
あの華奢な身体を抱きしめられない。
キスできない。
ナイナイづくしのオンパレード。
檸檬不足で頭がおかしくなりそうだ。
朝までLINE攻撃を仕掛けたいのをグググッと我慢して、たった3行とスタンプ1個に思いを込めて毎日送る。
今頃どんな思いで聡子さん達にしごかれているんだろう。
檸檬、守ってやれなくてごめん。
聡子さんに楯突いてでも連れて帰れば良かった。
でも。
それは後々、俺達の後盾を失うことになり、結婚どころの騒ぎではなくなる。
結局、ああするしかなかった。
あの時、不安で一杯の檸檬を残して、思いっ切り後ろ髪を引かれる思いで帰宅したのだが。
「満、遅かれ早かれこうなってたんだ。
俺も吃驚したけど、なるようにしかならない。
西山君は多分上手くこなしていくと思うよ。」
「気休めは止めてくれ。
俺は…檸檬を守ってやることができなかった。
愛する男の1人すら守ってやることができないなんて。
やっぱり、権力もないただの情けないお飾り当主なんだ。
俺は…無力だ。あんなばーさんひとりに太刀打ちできないなんて…」
「聡子さんは特別なんだ。
あの人ひとりで国の一つや二つ、簡単に滅亡する。それくらいの人だ。
なぁ、満。西山君はただのかわいいお前の伴侶じゃない気がする。
卒なく色んなことこなしていくし、俺達が思うよりもずっとメンタルも強くてしなやかだ。
きっと皆からかわいがられる、そういうタイプだと思う。」
「お前がそう思うだけだろ?
俺は、俺は檸檬が心配で心配で堪らないんだよ…
昨夜 も、LINEが既読になって暫く返信がなかった。
暫くしてから自分が生けた花の写真と一緒にいつもの“大丈夫”の言葉を送ってきたけど…何かあったに違いない。
檸檬は落ち込んでいるに違いない。」
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