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心配性の当主②
大きなため息をつく俺に
「なっさけねぇー。そんなんだから『お飾り』だとか『ヘタレ』って言われるんだろうが!
シャンとしろシャンと!」
バシッ
背中を叩かれ気合注入された。
そう言ってるのはお前だけだろ、俊樹?
「いってぇー…」
敢えて反論せず、またため息をついてパソコンを開いた。
画面には、満面の笑顔の俺と、恥ずかしそうに微笑む檸檬。
「檸檬…」
暗黒城(敢えて俺は今そう呼ぶぞ!)に囚われた愛おしい婚約者。
毎日孤軍奮闘している様が目に浮かぶようだ。
聡子さんはじめ、あそこに巣食うのは金山の親戚筋から選抜された百戦錬磨の女性達。
面と向かっての嫌がらせはないだろうが、その分陰湿なことをやらかしているかもしれない。
ましてや、檸檬は男だ。
それだけで当主の伴侶として認めない、とイジメに拍車がかかっているかも。
毎晩くるLINEには、元気な風に振る舞う文字が並ぶが、毎日泣いているのではないだろうか。
「…る、…つる、満っ!」
ハッとして顔を上げると、何とも言えない顔の俊樹にハッパを掛けられた。
「心配したって仕方ないじゃん!
西山君が超えていかなくちゃならない壁なんだ。
お前が心配すればするほど、その執着が移って西山君を雁字搦めにするぞ。
1人で立ち向かってるあの子に、逆にプラスのパワーを送ってやるくらいの覇気を持てよ!
仮にも当主のお前が選んで、聡子さんの身辺調査にも合格点をもらって修行してるんだから、もっと自信を持てよ!
あの聡子さんがついてるんだ。下手な目には遭わないはずだ。
お前自身誰にも文句を言わせないくらいのしっかりした当主になって、西山君を守ってやらないとダメじゃないか!
『守る』って言ったんだろ?『幸せにする』って誓ったんだろ?
満、しっかりしろよ!」
「……俊樹、お前の言う通りだ。ありがとう。
分かった。
今日の会議の資料を頼む!」
「承知いたしました!」
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