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心配性の当主③
俺はいい幼馴染と右腕を得た。
本当に感謝している。
それからの俺は、俊樹が言うには『人が変わったように』しっかりしてきたらしい。
社内外からも、評判は鰻登りだ。
皆が俺を見る目付きが変わってるのも気が付いている。
「社長、纏うオーラが変わりましたね。
あちこちからそういう声を掛けられますよ。
西山君のお陰ですかね、くっくっくっ。」
なーんて揶揄いが含まれていても、あの俊樹に褒められて悪い気はしない。
そりゃそうだ。
俺なりに、今まで以上に色んなことに対して努力している。
時間も労力も惜しまない。
その理由はただひたすら『檸檬のため』に。
俊樹に指摘されたように、檸檬の元気が満タンになるよう、愛のパワーを送ってやらなきゃならないからな。
ただの思い込みかもしれないが、俺の思いは絶対に檸檬に届くと信じている。
だから、俺が落ち込んだりサボったりする訳にはいかない。
檸檬が側にいなくても、ずっと一緒にいるように思いを寄せる。
物的距離があっても、俺達の思いは離れたりはしない。
これは、もう、決定だ。
檸檬が修行を終えて帰ってきた時に惚れ直してもらえる自分になってなきゃ。
だって、そうだろ?
檸檬だって(多分)泣きながら頑張ってるはずだ。
その頑張りに、俺だって応えなきゃ男が廃る。
でも……やっぱり会いたいよ、檸檬。
会えない時間が長くなればなるほど、思いが募る。
思いを交わして、お互いの気持ちをもっと深め合う前に離れ離れになった俺達。
だから余計に色んなことが美化されてしまうのだろうか。
ピピピピピピ
アラームを止める。
妄想と反省の時間は終わりだ。
ノックの音と共に俊樹が入ってきた。
「社長、お時間です。」
「ありがとう。では出掛けようか。」
「はい。」
ネクタイの結び目をクッと締め直して、交渉のため席を立った。
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