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心配性の当主⑤

はあっ…… 「そうだな…そうだよな。 追い返されたり逃げ出したりしてないもんな。 あんなに華奢で、顔立ちが派手なせいで一見遊んでそうな弄られキャラに見えるのに。 俺達が思ってるより…あの子はしっかりしてて真面目で強い。 どんな辛いことも嫌なことも笑顔の下に隠して、しなやかに受け止めてくれる。 なぁ、俊樹。 だから、だからこそ檸檬が我慢をして許容範囲を超えてやしないか、心配でならないんだよ。 我慢すること、耐えることを知ってるからこそ、知らず知らずその器を超えやしないか…… お前が言うように“執着してはダメだ”って分かってるんだけど、どうしてもこの思いは、どんなに取り繕っても消えやしない。」 「……満。心配なのは重々分かる。 でもな、聡子さんから何も連絡がないんだ。 曲がりなりにも、西山君はお前の『婚約者』だ。 そういうポジションだから、修行とはいえそれなりの扱い方をするはず。 その辺のさじ加減は、聡子さんが表に裏に暗躍してるのは分かるだろ? 必ずこっちに連絡が来る。 それが全くないんだぜ? 『心配するな』のサインじゃないのか? もう少し、様子を見よう。 1週間経って何も連絡が来なければ…俺が様子を見に行ってくる。 それでいいか?」 「俊樹…うん、分かった。俺も、オトナになるように精進するよ。」 「あぁ。そうしてくれ。 頼むよ、殿!」 その夜―― 文豪の手紙になぞらえて、俺は思いを込めて檸檬にこう送った。 「檸檬、君にキスを5つ送るよ――額に、両の瞼に、鼻先に、そして、唇に。 愛してる。 心から愛してる。」 檸檬からは 『満さん、俺からは6つお返しします。 5つに加えて頬に…… 心から愛しています。』 抱きしめ合うウサギのスタンプを送り合い、メッセは途絶えた。 俺よりひとつ多いキスの数。 俺が思う以上に愛してる、って伝えてくれたのだろう。 あぁ、檸檬。 愛おしさを抱きしめて目を閉じた。

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