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本領発揮(3)
「ただいま戻りましたっ!」
「檸檬さん、お帰りなさい。時間厳守でしたね。
お目当の物は見つかりましたか?」
「はい!満さんもきっと喜んでくれると思います。」
「そう、それは楽しみ。
さ、お昼の支度もできてますから先にいただいて、それから取り掛かりましょうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
少し早めの昼食だったが、きっと聡子さんの配慮だろう。
今日は瞳さん作の炒飯だった。
悔しいけどお店で食べるやつみたいに美味い。
今度隠し味教えてもらおう。
片付けを終えて支度を整える。
満さんの身長は、俺より10センチは上だったかな。横幅は…うーん、こんなもんか。
俺は両手を組んで輪っかを作ったり、手を広げたりしてみた。
「檸檬さん、支度は整いましたか?」
「はっ、はいっ。大丈夫です。」
あー、吃驚した。変なことしてるって思われなかっただろうか。
「早速ですけど、布地を見せて下さる?」
「はい、これです。」
「これは…」
聡子さんは見るなり目をぱちぱちと瞬かせ、次いで俺を見つめた。
「檸檬さん、あなたどうしてこれを?」
「実は……懇意にさせてもらっているお店にある物から、満さんの持っている似たような物を省いていったのですが、ピンとくる物がなくて。
困っていたら店長さんが『これでよければぜひ』って私物を出してきてくれたんです。
これなら満さんに喜んでもらえる。
そう思って譲っていただきました。」
「そう……そうだったの。
ふふっ。結局お嫁に来ちゃった訳ね。」
「え?」
「いいえ。何でもありません。
満様の寸法はこれよ。
型紙はこれをお使いなさい。
さぁ、檸檬さん。お手並み拝見といきましょうか。
2、3日内に仕上げれるかしら?」
「え…任せていただけるんですか?」
「だって“お手の物”なんでしょう?
楽しみにしています。」
聡子さんは軽やかな笑い声を残すと、部屋を出て行った。
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